LiSAが語る2010年代「10年貫いてきたからこそ、仲間に入れてもらえた」

アニソン界におけるジャンル越境、ロックシーンと結びつける試み

ーバンド界隈にいた立場から、アニソン独自のマナーで悩んだりしたこともありましたか?

LiSA:というよりは、ロックが好きな人たちが扉を開いてくれるまで時間がかかった印象ですね。「放っておいて」と思われてたかもしれないけど、アニソン側のお客さんは最高だし、ロック側にも素晴らしいライブをする人たちがたくさんいる。ここは絶対に相性よさそうだなって。そうやって企んでる身としては、ちょっと歯がゆい部分もありました。だから、こっち(ロック側)で培ってきた楽しみ方を輸入して、アニメ側の人たちと一緒に遊ぶ方法を探そうと。

ーバンドマンの熱い演奏と、ピュアなアニメ好きの熱狂ぶりをジョイントさせるというか。

LiSA:ジャンルで分断されてるのがもったいないと思ったんですよ。ある意味、どちらも閉じこもっている空間だったので。でも、お互い突ついたら絶対に好きになりそうな確信があったんです。どちらの魂も好きな私としては、友人を見るみたいに「このふたり、絶対に仲良くなると思うんだけどなー」って感じでしたね。

ーそこから少しずつ距離を縮めていったわけですね。

LiSA:すごく地道にやってきましたけど、おかげで少しずつ信頼してもらえた気がします。10年ずっと貫いてきたからこそ、仲間に入れてもらえたのかなって。

ー今だから「認められた」という手応えもあるわけで、はじめのほうは悔しい経験もされたのでは。

LiSA:ありますね。初めてのシングル(2011年の「oath sign」)をOPテーマに起用してくださった『Fate/Zero』は、そこに信頼関係を築いてきたアーティストさんではなく、何も知らない私が関わるとなって、「なんでLiSAなの?」ってたくさん言われました。新しいところに関わらせてもらうときは、いつもそんな気がします。



ー紅白に選ばれるほどになった今でも、新しい舞台はアウェイに感じてしまう?

LiSA:そうですね。ロックフェスに出させてもらうときもそうだし、例えばMAHさんが曲を書いてくれるときも、お客さんはきっと「なんで関わるの?」みたいな気持ちだったと思う。そこはもう、納得してもらえる作品を作るしかないですよね。いつかわかってもらえるように誠実に作っていこうと。

ーそのポジティブさの原動力ってなんですか。

LiSA:私にチャンスをくれた人の顔に泥を塗りたくないし、チケットを買ってくれた人を後悔させたくない。でも一番はやっぱり、必要としてもらえたり、自分を信じてもらえることが嬉しかったんだと思います。

ー自分にとって、この約10年で変わらなかったものってなんだと思いますか?

LiSA:その時その時に、自分のできる全部を注ぐってことですね。作品に対してもそうだし、ライブでもそう。

ー目の前のものに全身全霊で挑む、と。

LiSA:blink-182のトラヴィス・バーカーが言ってた、「Live Fast, Die Fun」って発言がすごく印象的で。私の血肉となり、今では自分のなかで「今日も生きた」って言葉になってますけど、根底の部分は一緒。短く濃く生きるじゃないですけど、その魂はたぶん変わってないような気がします。


Photo by Kentaro Kambe

ー10代のときに見聞きしたものの影響は大きいですか。

LiSA:ELLEGARDENもずっと好きで。細美(武士)さんこそロックスターだと思っていたし、前を歩いてきた人たちが精一杯を注いでくれたから、私たちみたいな下の世代が育ってこれたと思ってるので。同世代のフォーリミ(04 Limited Sazabys)、SiM、coldrainみたいに、横に並んで頑張っている人たちを見ても、その血を裏切らず、しっかり受け継いで活動している人たちがの音楽しか届かないんだなーって。そう思うと今は、自分が見てきたものが嘘じゃなかったなって感覚があります。

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