川谷絵音が語る2010年代「ハイペースに作品を出し続けたら認知されるようになった」

川谷絵音(Photo by Madoka Shibazaki/ロケ地協力:SHARE LOUNGE)



ハイペースな創作を続ける理由「リーチしていかないと」

ー「見返す」っていうのが、ニュアンス的に「分かり合う」っていうことに近づいてるのかもしれないなと。

川谷:だから、ワッて何か言われたときに、「俺も逆の立場ならそう思うかも」とか考えるようになりました。これはちょっとエッジの効いた話ですけど、犯罪者とかって、最初は「何こいつ?」って思うけど、その人の家庭環境が明らかになったときに、親から壮絶なDVを受けてたとか、学校にもバイト先にも居場所がなかったとかってなると、「俺だったらどうなってたかな?」って思ったりして。卵アイコンで有名人にクソみたいなリプライをずっと送ってる人も、きっと何かあったんですよね。誰でもわかることだけど、生まれたときはみんな一緒で、でも家庭環境で変わって行く。それに対して「かわいそう」って思うのも、あっちからしたら俺の方がかわいそうかもしれないし、お互いのことを100%は知らないわけで。でも音楽だったら、そういう敵と味方を超えたところに行けるんじゃないかなって思うし、それって俺が一番証明しやすいというか。俺なんて基本マイナスからスタートしてて、でも音楽では一定の評価を得られてるってことは、そのマイナスを超えられるだけの力が音楽にはあるってことだと思うんです。

ー確かに。

川谷:俺のことを壮絶に批判してた人が、何かをきっかけに俺の曲を聴くようになるって、痛快でもあるし、救いでもあるというか、やっぱり音楽はすごいなって。曲を聴いて、「この人はこういう人なのかな」って、音楽に人間性を当てはめたりしがちですけど、逆に言うと、音楽が良かったら、その人の人間的なイメージも変えてしまうかもしれない。2010年代の半分はずっとそういうことと向き合ってきて、2年くらいは絶望しそうになったけど、それでもペースを乱すことなく、むしろよりハイペースで作品を出し続けたら、ライブラリがめちゃ多くなって、その分これまではリーチしなかった人にも届きやすくなって、「これが川谷絵音なんだ」ってことが起きやすくなった。そういうのもあったから、減らしちゃいけないなって。人の心に入って行くには、聴いてもらえる可能性を増やすためには、こっちからリーチしていかないと。そういうことも考えるようになりましたね。

ー「2010年代の音楽シーンの動き」を考えたときに、インディゴでロック、ゲスでジャズやファンクの要素を内包したポップス、ジェニーハイでラップっていうのは、「世界の動きとリンクしてた」という言い方もできると思うんですよね。ちょっと強引だけど、でも川谷くんのリスナー感覚があったからこそだと思って。

川谷:ジェニーハイに関してはわりと狙ってて、だからラップの曲だけエンジニアを変えて、D.O.I.さんにお願いして、ストリーミングのプレイリストで圧縮かかっても大丈夫なようにしてたり。ヒゲダン(Official髭男dism)の場合はテッド・ジェンセンにマスタリングを頼んでたり、ストリーミング戦略をちゃんとやってたのも、今売れてる理由のひとつだと思う。ジェニーハイはギターの曲もあるけど、ガシャガシャ鳴らさずに単音が多いし、ラップの曲のトラックはめっちゃ凝って作ってるから、それは自分の中でも新しかったです。



ーPARKGOLFと一緒にやってて、間違いなく時代感も出てますよね。

川谷:この前ジェニーハイで「ミュージックステーション」に出たら、Hey! Say! JUMPやGENERATIONSの曲って、完全に海外のトラップみたいな音で、ジャニーズとかLDHは完全にそっちにシフトしてるんですよね。でも、日本のバンドシーンはほぼほぼ変わってなくて、フェスも5年前と同じような感じだし、その中にKing Gnuみたいなバンドが一握りだけいるっていう。海外はどんどんギターがなくなって……2010年代っていうことで言うと、やっぱりジェイムス・ブレイクが出てきて、違うものが始まった感じがします。ダブステップって言葉自体当時は聞き慣れなかったけど、あの辺から日本でも音楽オタクの人たちの音作りがそっち寄りに変わって、ヴォーカルの加工が増えたり、ビリー・アイリッシュも言ったらそこからの流れですよね。でも、日本のバンドシーンは……日本と海外のSpotifyのチャートって全然違って、日本は結局ただ売れてるものが一位なんですよね。



ーでも、それこそヒゲダンやKing Gnuが「紅白歌合戦」に出ることが決まったり、少しずつ変化はあるんじゃないですか?

川谷:ヒゲダンは大きく言ったらミスチルとかback numberの流れだと思うんですよね。そこに蔦谷(好位置)さんがプロデューサーとして入って、音作りを徹底して、その中和感がちょうどよかったんだろうなって。逆に、King Gnuは行き切ってるから、ああいうバンドがシーンを変えていくと思う。でも、フォロワーは出づらいでしょうね。あれを真似るのも難しいし同じことをやってもキャッチーにはならない。それこそ彼らはいまゾーンに入っていて、攻めた曲でも売れる。でも、やっぱりフェスがあると……今までと同じやり方でも、1万人がそれで踊ってる光景を見た若いバンドは「これでいい」って思っちゃって、バンドマンがみんなフェスを目指す限り、結局変わらないのかなって。

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