「Lover of life, singer of songs」クイーンで時間を共にしたブライアン・メイによるシンプルな追悼の言葉は、“フレディ・マーキュリー”として世界的に知られる複雑な人物を的確に表現している。「悔いのない人生を送った彼が、この言葉に集約されていると思う」とメイは、BBCのドキュメンタリー番組で語っている。「彼は寛大で優しく、時には短気な人間だった。それより忘れてはいけないのが、彼が一生を捧げると決めていたもの。音楽を作ることだ」。
クイーンのレコード・デビューに先立ち、マーキュリーはバンドの2人の協力でソロ・レコードをリリースしたが、そこには思い上がった様子も見られた。1973年初頭、まだ駆け出しだったバンドは、ロンドンにあるトライデント・スタジオでデビュー・アルバムのレコーディングを行っていた。デヴィッド・ボウイやザ・ビートルズらも使用した最新機器の揃うスタジオだった。まだ無名に近かったクイーンは当然、ピーク時間を避けた午前3時〜7時の時間帯の使用のみが許された。「彼らにはいわゆる“ダークタイム”を割り当てられていた」とプロデューサーのジョン・アンソニーは、伝記作家マーク・ブレイク著『Is This the Real Life? The Untold Story of Queen』の中で証言している。「エンジニアが好みのバンドのプロデュースをしたり、従業員が好きに使えた時間帯だった」