魑魅魍魎のジョニー・デップ裁判、本人が内情を明かした密着ルポ

米ローリングストーン誌の記者は3日間に渡り、ジョニー・デップを密着した(Matt Mahurin for Rolling Stone)


ワルドマンは、これがカリフォルニア州法第4章6147項に違反していと主張し、デップがそれに続く。ワルドマンの話によると、最初にTMGに連絡をとったとき、ジョエル・マンデルがデップの経済状態はすべて「ハリウッド・マス」が原因だとモゴモゴと言い続けたらしい。つまりデップは自分が作ったと信じ込んでいる金額を使うのだが、そこから税金、エージェントやマネージャーの給料などが引かれることを一切理解していないというのだ(TMGはこの会話が行われた事実はないと主張している。)。

ワルドマンは自分をデップの復讐者と呼んでいる。「誰もハリウッドの怪物に挑戦しないし、誰も生き残れない。みんな、怖がっているだけだ。でもジョニーは違う」とワルドマンが言う。

マンデル側は、デップの訴訟に関して最初に知ったのは、あるレポーターがコメントをくれと連絡してきたときだったと述べた。これはかなり稀なケースと言える。というのも、訴訟をおこすときには、告訴する前に相手に通知するのが法曹界の常識なのだ。

告訴してから数日後、法律事務所マナット、フェルプス&フィリップスの会議室で和解交渉の会合を持った。この法律事務所はデップの訴訟当事者の一人ベン・チューが勤務している事務所だ。ワルドマンはヨーロッパから電話で参加し、チューはワシントンからビデオで参加した。

マンデル側にしてみれば、そんな会合が招集された理由が不透明だった。つまり、ワルドマンが和解を望んでいるのであれば、告訴する前に和解交渉を求めてくるのが普通だからだ。最終的にマンデルから話を聞くことができた。

「調査がなっていない」と彼が言い、最初の申請書の間違いを指摘した。その中にはデップの財務を担当していたのが公認会計士のタマゴだったという主張が含まれているか、マンデルによると30年の実績を持つ会計士が行っていたらしい。

「事実はそこにある。書類を読んだらわかる。それに対する反応を歓迎する」と、ワルドマンがミュンヘンからの電話で彼らに伝えたと教えてくれた。

和解交渉の会議でマンデルが負けたと、会議に同席した二人の人間が言った。

「君は私から満百万ドルも奪った。今度は私の番だ。これからジョニーを破滅させる。すべてが明らかになる」と、マンデルが言ったらしいのだ(マンデルも彼の弁護士マイケル・カンプもマンデルがそのような発言をしていないと主張している)。

マンデルたちは立ち上がって会議室を去ったが、廊下でワルドマンの声を聞いたと言う。そのとき、ワルドマンは自分のスタッフに訴状を細かく調査したかと質問していたらしい。

このような不正行為をどう思うかとデップに聞くと、彼は肩をすくめてこう言った。「俺の役割はほんの些細なもので、全体像は映画の『マトリックス』みたいなもんだよ。俺はあの映画も見ていないし、スクリプトも理解していなかったけど、同じことが目の前で起きているってわけだ」と。


デップが『ラスベガスをやっつけろ』に主演する前年の1997年にハンター・S・トンプソンと。

2017年の夏、TMGはデップを相手取り水素爆弾クラスの対抗訴訟をおこした。訴状でデップは自制心が皆無の甘やかされた子供と表現されている。マンデルの弁護士カンプは、TMGが他のクライアントから訴訟をおこされたことは一度もなく、「デップは生活を維持するために月額200万ドル以上必要な激しい浪費生活を続けていたが、彼にはそんな生活を維持する金銭的余裕はなかった」と訴状に記している。また、姉クリスティや他の友人と家族にデップ自身が何万ドルと与えていて、彼自身がそういう状況すべてを理解しており、それでも彼の財産に群がる人間を雇用していたとも書かれている。

カンプが主張している点は、長年の私設弁護士であるブルームに加えて「デップはお抱え弁護士団に何百万ドルと支払って膨大な数の法的危機から救い出してもらい、口止め料を払っていた」ことだ。彼らの申し立ての中には弱みにつけ込んだ卑劣なものもある。TMGは口止め料に関する詳細も、法的危機の詳細も明らかにしていない。デップの税金はどうだろうか。彼らの言い分は、デップが慢性的に現金を持っていなかったので支払いが遅れた、だ。

TMGがリストアップした買い物一覧を見ると、まるでデップが10歳前後の多動症候群の子供に財布を渡したかのようだ。14軒の住居で7,500万ドル。仲間のハンター・S・トンプソンの遺灰を大砲で空に打ち上げるのに300万ドル。リアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』のセットで使用したカウチを娘のために買ったときに使ったのがたった7000ドル。70数本のギター、バスキアやウォーホールなどのアート作品200点を購入し、45台の高級車を所有し、個人的な旅行費として毎月20万ドル費やしていた。

次にもっと個人的な目的での経費も書かれている。訴状によると、デップはサウンド・エンジニアにスタッフとして雇っていた。このサウンド・エンジニアは撮影中にイヤーピースを通してデップにセリフを教えるのが仕事で、デップもこれを否定していない。耳からセリフが聞こえるので、目の演技に集中できるとすら言っている。

「バグパイプ、赤ん坊の泣き声、爆弾が炸裂していた」とデップ。「それが真実だ。俺のヒーローたちの何人かは無声映画に出演していたんだよ」と私に言いながら、デップがタバコに火をつけた。そして「目の奥に神経を集中しないとダメだった。そのときの俺の感情は……目の奥に真実がなければどんな言葉も意味がない」と続けた。

しかし、その言葉がハリウッドの記念品、特にブランドとマリリン・モンロー関連の品々を保管する倉庫が12ヶ所もある説明にはなっていない。マンデルの主張では、デップは呼べばすぐに応じる医者を確保するために120万ドル、24時間セキュリティに年間180万ドルを費やしていて、これは彼の母にも適用されていたと言う。(デップに母親のセキュリティが必要だった理由をたずねると、デップは母親に救急車が必要な状況に備えてだったと答えたと、彼の関係者が教えてくれた。TMGは看護師を雇うほうが安いとデップを説得したが、デップは納得しなかったらしい。) 弁護士のカンプはデップの問題の原因は精神的なものだと提示した。「過去を思い返してみると、デップは買い物依存症に冒されていた可能性があり、この訴訟を通してデップの精神鑑定を行うとはっきりするだろう」と言っている。

Translated by Miki Nakayama

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