魑魅魍魎のジョニー・デップ裁判、本人が内情を明かした密着ルポ

米ローリングストーン誌の記者は3日間に渡り、ジョニー・デップを密着した(Matt Mahurin for Rolling Stone)


ローリングストーン誌に最初に連絡してきたのは、彼の担当弁護士アダム・ワルドマンだった。デップの評判を落とした不正とその結果について記事を書かないか、と。ワルドマンはハリウッド・リポーターのデップに対するアンチ記事を指摘した。この記事では、デップに何度も財政的危険を忠告した人物としてメンデル兄弟を好意的に扱っている。TMGの発言は一切書かれていないが、ワルドマンはこの記事に彼らの意向が著しく反映されていると見抜いたのだ。

ワルドマンは、長年デップのパブリシストを努めた厄介なロビン・バウムの関与なしでこの状況をうまく切り抜けたいと明言した。私はこの一件について調査を始め、ワルドマンの言葉の信憑性を探った。彼がシェールの弁護士だったときの小ネタ記事があり、シェールは彼の娘ペッパーの名付け親だと記載されていた。しかし、最初に見つけた大きなネタがビジネスインサイダーの「プーチンの代理人として活動しているアメリカの会社重役たち」だった。この代理人リストにワルドマンが入っていたのである。そしてこの記事には、ロシアの新興財閥ロシア・アルミニウムの社長でロシアの大統領と強いコネクションを持つオレグ・デリパスカへワルドマンが提供している仕事の内容が事細かに書かれていた。

ビジネスインサイダーによると、ワルドマンはデリパスカの代理人の報酬として230万ドル(約2億5千万円)以上を受け取っているらしい。一方、デリパスカはトランプの選挙キャンペーン絡みのロシア疑惑の端役として名前が報じられている。ワシントン・ポスト紙が報じたところによると、当時の選挙キャンペーンの責任者ポール・マナフォートが、共和党全国大会の直前にデリパスカにキャンペーンに関する個人的なブリーフィングを提案したと言う。ワルドマンはプーチン・トランプのイカれたスクリプトにカメオ出演していたことになる。2月にトランプ自身がお得意のツイートで、相手の名前は出さなかったが、トランプ寄りのライター、クリストファー・スティールと民主党上院議員マーク・ワーナーの会合を邪魔したとして、“彼”を非難している。そして4月には、デリパスカはトランプ政権の制裁対象リストに入れられ、デリパスカが所有している企業のアメリカ国内での活動が著しく困難になった。

ワルドマンがデップ陣営に加わったのは2016年10月。ワルドマンのクライアントの一人からデップが助けを必要としていると聞いたとのことだ。その直前に、TMGが同社への500万ドル(約555億円)の借金が返済されていないとして、デップのロサンゼルスの自宅の抵当権実行通知を送っていた。TMGは公にされない司法外の差し押さえ通知としてこれを申し立てた。この時点でデップの財政状況は公にはなっていなかった。

ワルドマンはそれを変えようとしていた。ロサンゼルス市内のベルエアにあるエド・ホワイトの自宅で行われた夕食会にワルドマンも参加した。エド・ホワイトはデップの新しい会計士である。ワルドマンが言うには、ホワイトはTMGがデップの収支計算書をしっかりと処理していなかったと確信していた。その状況の詳細を確認後、ワルドマンはどんな状況か捜査すると彼らに伝えた。

ワルドマンとデップは急速に接近し、親友となった。マンデル側のデップの友人を発見すると、ワルドマンはデップに電話して「テッシオ」と言って忠告していた。これは映画『ゴッドファーザー』でエイブ・ヴィゴダが演じたコルレオーネを裏切る役の名前で、デップはすぐに意味を理解し、「テッシオなんてクソ食らえ」と返事したと言う。

それから2ヶ月後、ワルドマンの助言に従ってデップはマンデル兄弟を告訴した。この訴状によると、デップには月間収支報告書が渡されず、商取引を許可する署名ページだけ見せられることがほとんどだった。そして、デップの姉クリスティに無断で渡された700万ドル(約7億7千万円)に加え、13年間連続でデップの税金支払いを遅らせたTMGが、アメリカ国税局がデップに追徴課税600万ドル(約6億6千万円)を課す原因となったことも申し立てられている。さらに、TMGは自身の不始末を補填するためにデップ名義で3400万ドル(約37億7000万円)を借入し、2014年にデップの長年の弁護士ジェイク・ブルームが推進した10%という高金利のハードマネーローン(不動産を担保に投資家から借金すること)で1,250万ドル(13億8700万円)を借入したことが最後の一撃となった。このローン契約では、クリスティ、ブルーム、マンデル兄弟の手数料はローン返済の前に支払われることになっていて、これはデップに対して支払われる『パイレーツ・オブ・カリビアン』の再使用料がデップの手に渡る前に全額消えるということだった(のちにデップはブルームを相手取って訴訟をおこしている)。ブルームとグロスヴェナーの間にはその前から取引があったため、デップの弁護団はグロスヴェナー・パークという金融会社を通してのハードマネーローンは違法な内部取引だと主張している。デップによると、1250万ドルのうちの120万ドルは借入契約が交わされる前にブルーム、グロスヴェナー、TMGの3者で分配されたと言う。

デップとワルドマンはこの訴訟がハリウッドを激変させると確信している。彼らの訴訟はホームランを狙ったリスクの高いものではあるが、TMGの5%のコミッション料は不正行為のため、それで得た2500万ドル以上の収益をデップに返済すべきと主張している。不正とする根拠はいくつもあるが、TMGは財務管理者としてのみならず、弁護士としての業務も行っていたため、本来であれば映画ごとにデップと契約を交わす必要があったとデップ側は主張しているのである(ブルームに対しても同様の訴訟をおこしたが、ブルームはすべての申し立てを否定する対抗訴訟をおこした)。映画ごとの契約がなされなかったため、デップ側の訴状にはデップはコミッション料の何百万ドルを取り戻す権利があると記されている。一方、TMGの対抗訴訟では、これはデップが行った最も馬鹿げた訴訟の一つと指摘し、デップには定額契約している高価なハリウッド弁護士であるブルームとマーティー・シンガーがいるのだから、自分たちが弁護士的な役割など一切していないと主張している。

Translated by Miki Nakayama

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