魑魅魍魎のジョニー・デップ裁判、本人が内情を明かした密着ルポ

米ローリングストーン誌の記者は3日間に渡り、ジョニー・デップを密着した(Matt Mahurin for Rolling Stone)


彼は居間のソファーに移動して、テレビのスイッチを入れた。おくればせながら1970年代に人生の全盛期を迎えた美食たちに対して、デップは強迫観念と紙一重の愛着を持っている。つまり、マーロン・ブランド、ハンター・S・トンプソン、ドン・リックルズなどだ。「リックルズは最高に勇敢なコメディアンだった。彼は何でも言った」とデップ。その証拠と言わんばかりに、デップは『The Dean Martin Celebrity Roast』に出演したリックルズのビデオを見つけて、ボクサーのシュガー・レイ・ロビンソンの話を始めた。「俺はシュガー・レイ・ロビンソンに感謝したい。だってロッキー・グラジアノに『なあ、ベイビー、お前は俺を痛めつけているぜ』って言ったんだから。シュガー・レイは偉大なシャンピオンだったのに、だよ。シュガー、あんたに直接話してほしいけど、黒人って口が固いからな」。

「まったく」とワルドマンが呟いた。

デップは、攻撃しているわけじゃなくて心臓が強いだけだ、と強調した。私は「どうなんだろうね」と口ごもるしかできなかった。しかし、デップはそんなことはお構いなしで、自分を愉快な男と信じている。そして、初期の『パイレーツ・オブ・カリビアン』作品で、スパロウが海岸に打ち上げられたときに、口ごもりながら支離滅裂な罵り言葉を言った様子を教えてくれた。

「俺は『ダーティー・サンチェス』って言ったんだ」とデップ。これは不快な性行為を表わすスラングだ。「DVD化する前にその部分はカットされていたよ」。

デップのスパロウへの愛着は半端ない。デップのアイドルであるキース・リチャーズがモチーフのキャラクターだ。彼はスパロウというキャラクターを守るためにディズニーの脚本家たちと何度も戦ったと教えてくれた。

「どうしてあんなにも凶悪なわき筋が必要なのか知っているか?」とデップが聞いて、自分で答えた。「屈折しているんだよ。ジャック・スパロウ船長が悲しむのを見たい観客はゼロさ」と。


2010年、デップのアイドル、キース・リチャーズと。

デップがニュースを観ていると、ハーヴェイ・ワインスタインの報道が始まった。彼は首を振って、ワインスタインをろくでなしと呼んだ。彼が主演した『デッドマン』の最後のシーンは契約書によって無理やりカットされるはずだったが、監督のジム・ジャームッシュがそれを断固拒否したために、ワインスタインがこの映画をお蔵入りにしたことがその理由だ。「あの男は威張り散らしていた」とデップ。「やつの女房を見たことがあるか? 近視眼的というか何というか。あの男は『ポコノの山奥に入って背中に毛があるオンナを見つけなきゃ』なんて面白みも余裕もなかったってことだな」と続けた。

そして、再び話を中断して、自分の優しさを確認するために、今言った発言を反すうし始めた。デップはワインスタインに付き添って、彼の娘を学校に迎えに行った話を始めた。デップはワインスタインが娘を本当に愛しているのがわかった、と。「あのゴリアテのシュレックみたいな大男が、あのハーヴェイ・ワインスタインが、娘にレインコートを着せようと腰を曲げた、あの光景には息が止まりそうになったよ」。

外はロンドンの闇が夜明け前の薄暮れに変わり始めていた。デップ以外は全員疲れ果てていた。デップは数分間、席を外してから、元気に戻ってきた。そして自分が出演している友人のマリリン・マンソンの「KILL4ME」のビデオを見なきゃダメだと宣言した。このビデオでデップは裸同然の女性たちと卑猥なポーズをとっている。テレビのボリュームをあげて、インダストリアルなギターの音に負けじと「マリリンは最高だ。すごく仲良しなんだ。俺の娘とバービー人形で遊んでくれたしな」と叫んだ。ワルドマンはマンソンのビデオに苦痛の唸り声を発し、ソファーの上の装飾用クッションで顔を隠した。そんなことはお構いなしで、デップは画面のボリューム表示が99になるまで音量をあげたのである。

時差ボケの私はデップに少し眠らないと無理だと伝えた。デップはがっかりした表情を浮かべたが、すぐに暗い廊下に私を連れ出して、何度も角を曲がった。寝不足でぼーっとした頭で私は「もうすぐ寝落ちするかも」と考えていたら、扉が開いて、外科手術用のマスクを付けた大男が突然現れて、私は思わず叫び声をあげた。

「何だよ!」

デップが笑う。

「あれは警備員の一人さ。風邪をひいているんだよ。君が安全に出られるようにしただけだ」と言って、私を軽くハグして言った。

「不正は明日話そう」


2017年、ロンドンでマリリン・マンソンと共演。

Translated by Miki Nakayama

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