魑魅魍魎のジョニー・デップ裁判、本人が内情を明かした密着ルポ

米ローリングストーン誌の記者は3日間に渡り、ジョニー・デップを密着した(Matt Mahurin for Rolling Stone)


姉クリスティが得た700万ドルという使途不明金と、彼のアシスタントのネイサン・ホームズが得た75万ドルが、そもそもどうやって彼らに渡ったのかをたずねたが、その答えは簡単に得られなかった。デップはクリスティをマンデルの「カモ」だったと言い、それ以上の説明はしなかった。のちにデップの取り巻きたちから聞いたところによると、婚前契約書を作らずにハードと結婚したことがきっかけで、デップとクリスティの仲は険悪になったらしい。「彼は唯一自分の味方をしてくれていた姉を切った」と、デップの長年の仕事仲間の一人が教えてくれた。また、姉が自分の口座から支払いを受け取っていたことを、デップが知らないなんてあり得ないと教えてくれた側近もいた。

デップは、ホームズが受け取った金額は合計で75万ドルに満たないと、私に教えてくれた。「そんなに受け取っていないよ」とデップ。しかし、のちにワルドマンがデップは混乱していると言って、ホームズは75万ドル受け取ったと訂正した。(ホームズもクリスティも相変わらずデップの仕事を続けていいて、クリスティはデップの制作会社インフィニタム・ニヒルを経営している。)

この競合する訴訟合戦の中心にある大きな疑問の一つが、クリスティに財政状況を報告することがデップ自身に報告することと同じかどうかを裁判所がどう判断するか、だろう。TMGが恐れるのは、証拠に含まれた一通のメールで、その中でクリスティがマンデル関係者に、自分はデップの「総合情報センター」なのだから弟を放っておいてくれと伝えているのだ。マンデルがデップの借金の返済にクリスティのプロデューサーとしての収入分を充てようとしたとき、この取引に詳しい情報源から聞いたところによると、デップが激怒して許可しなかったと言う。これはマネージメント会社に騙されている男の行動とは思えない。

どうもデップの戦略はハリウッドで昔から行われてきた防御法のようだ。つまり、自分は注意を払っていなかった、注意を払っていない自分の代わりに注意を払うべき人々が何も知らない自分から盗んだ、ということなのだ。彼は私にこう言った。映画で演じるエキセントリックな役柄の持ち味を十分に発揮させるには外の世界に邪魔されたくない、と。(ティム・バートンがウィリー・ウォンカを演じたデップについて、ある部分ではアナ・ウィンターと、ある部分ではマイケル・ジャクソンとチャネリングしていたと、私に話したことがあった。)

「もし署名しなきゃいけない書類があれば、まあ、ときどきそういう書類が出てくるけど、俺はこんなふうにサインするよ」と言って、デップは書類に署名する素振りをやってみせた。右手でサインしながら、頭は左を向けて窓の外のロンドンの夜景を見ていた。「俺は書類の中身なんて見たくない。だって仕事仲間を信用しているから」と。

少しして、険しい表情でデップが「今は署名する書類は全部見ているよ」と言った。

ロンドンの滞在のあと、デップの借金の契約書の一部をみせてもらった。その一枚は1000万ドル以上の借金の証書だった。条件と金額は彼が署名した概要ページにしっかりと記載されている。これが見えなかったとしたら、彼は目をつぶって署名したことになるだろう。

ジョニー・デップを救出するのは(マンデルやクリスティ以外の)他の人たちということだけははっきりしている。その一人は救出を始める前にとめられた。2017年2月28日の夜、ジャニン・レイバーンは、TMGの主要弁護士マイケル・カンプから宅急便で配送された手紙を受け取った。そこにこう書いてあった。

「同封したのは、あなたとTMGの間で2010年12月3日から有効の契約解除、守秘義務、非難制限に関する契約書のコピーで……」

この手紙は無差別に送られたわけではない。レイバーンは元TMG経理部長で、デップの財務管理を担当していた。この手紙が届いた頃、彼女は裁判で証言する直前だった。つまり、カンプの手紙は丁寧な脅迫だったのだ。彼女が証言すると、2010年に署名したTMGとの別離契約書に違反すると脅しているのである。

レイバーンはそんな脅迫にも負けず、その2日後に宣誓証言を行った。これによって、カンプが彼女の証言をもみ消そうとした理由が、あっという間に明らかになったのである。レイバーンは2008年から2010年までデップの財務管理を担当していたが、その間に誠実ではない事柄を目撃したと証言した。彼女の証言によると、彼女が不安を感じ始めたきっかけは、デップやクリスティを呼ばないで書類を承認するように指示されたことで、これはカリフォルニア州では違法だ。レイバーンはその書類をマンデルのオフィスに戻して、彼の机に置いたと言う。

「これはできません」とレイバーンはマンデルに告げた。


ハリウッド・ヴァンパイアーズのバンドメイト、ジョー・ペリーと。

彼女によると、あるとき、マンデルはクリスティがあとで承認するからと言ったが、レイバーンはそれでも拒否した。(マンデルの弁護士はそのような事実はなく、マンデルは撮影セットにいるデップの署名をもらうために、わざわざ出向いていたと言っている。) また、同じ頃、レイバーンはクリスティの娘の結婚式の費用、家賃、受託ローンなど、クリスティの経費が、デップの財源から支払われているのを見ている。また、彼女はデップの承認を得ていない支出の説明をクリスティに2度求めたところ、彼女は「彼は弟なのよ。私のお金は彼のお金で、彼のお金は私のお金なの」と答えたと言う。そして、クリスティとデップの奇妙な関係についてレイバーンはマンデルに確認したところ、彼は肩をすくめただけだったと、レイバーンは証言した。

デップの署名が大雑把だった財務書類がいくつかあったというレイバーンの証言を確認したいと言ったら、ワルドマンがデップの署名を2通送ってくれた。1枚は2010年の借用書で、デップが海外に滞在中に誰かが偽造したと言われている署名だ。これは一般的で静かな印象だ。もう1枚は最近された署名で、こちらは大胆で風変わりな署名だ。ただ、一見すると両方の署名は似ている。デップはそれを認めず、ワルドマン宛にこんなメールをよこした。「俺の署名みたいに、素早く書いたように見える署名を誰かが書きたいと思っているようだが、実際は……何度も練習して書いた署名に見える。オーガニックな感じがしない。つまり、俺が言いたいことは……この『文字』は俺の手が書いたものじゃないってこと!!!」。

レイバーンが宣誓証言を行っている最中に、デップの弁護団の一人がデップは自分の支出について知らされていたかを彼女に質問した。「ジョニーは自分の財務状況を知らなかったと思います。私が知る限り、財務報告書は彼に送られていませんでした」とレイバーンが答えたのである。

レイバーンは「うちとは合わない」という理由で、2010年にTMGから解雇されている。それにもかかわらず、彼女は追加で3週間勤務して、後任者のトレーニングをするように言われた。4万ドルの解雇手当を受け取ったとは言え、解雇に困惑したレイバーンは、自分のためにそのときの記録を2ページに渡って書き留めていた。そこにはデップの一件も含まれていて、「ジョエルが言った、JDはいつも酔っ払っているから、何にでも署名する、と」という記述もある。(マンデルの弁護士たちはマンデルがデップの飲酒に言及したことは一度もないと主張している。)

Translated by Miki Nakayama

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