魑魅魍魎のジョニー・デップ裁判、本人が内情を明かした密着ルポ

米ローリングストーン誌の記者は3日間に渡り、ジョニー・デップを密着した(Matt Mahurin for Rolling Stone)


この1年半以上、デップに関するニュースはほとんどが悪いものだった。困難な経済状態に加え、セリフを覚えられないデップにイヤーピースを通してセリフを教えなければならなかったという報道もあった。彼は長年頼ってきた弁護士とエージェントと手を切ることになり、一人ぼっちになってしまった。タブロイド紙にさんざん叩かれた女優アンバー・ハードとの離婚も成立したが、その前に世間が思わず納得してしまった身体的虐待の疑いが持ち上がったのである。もちろん、デップはこの疑いは嘘だと必死に訴えている。デップの側近たちはハードと結婚しないように、結婚するならプレナップ(婚前契約書)を作ることを懇願したが、彼は愛する側近たちの助言をことごとく無視した。また、彼が気晴らしでやっているドラッグとアルコールが彼の身体を不自由にしているという噂も流れたのだった。

私がロンドンに滞在している間のデップは、愉快と狡猾と支離滅裂を行ったり来たりしていた。1日が始まるのは日没後で、そこから日の出まで続く。彼の表情には怯えてやつれた風情が漂っていた。街に繰り出そうと話はするものの、一度も家から出ることはなかった。彼が発する言葉が繰り返し奇妙な状況を繰り広げるたびに、彼が映画『アリス・イン・ワンダーランド/不思議の国のアリス』で演じた帽子屋マッドハッターのセリフ「発狂しちまったかな?」を私は思い出していた。


1997年の監督主演映画『ブレイブ』のセットにて。

彼が最も親しい親友はワルドマンのようだ。弁護士の彼とは2年ほど前に知り合ったと言う。49歳のワルドマンはシワのない顔で薄茶色の髪の毛をし、デザイナーものの黒のレザージャケットを着込んでいる。その声は心地よく、彼の声で言われたら鳥インフルエンザですら仕方のないことと思ってしまうほどだ。彼は「世界で一番のフェイスドクターと結婚している」と私に教えてくれた。

デップは現在自分が置かれている窮地に対する自己矛盾に気付いていないように見える。ワルドマンは、自分たちは浪費された財産の残りカスを求めて小競り合いしているハイエナではなく、ハリウッドに戦いを挑んでいる自由の戦士だとデップを説得したようだ。

滞在中にデップは自分が描いたアート作品を見せてくれた。疲れ切ったドリアン・グレイのように見えるデップに私は驚いた。「ジョニーが70歳と80歳でジャック・スパロウを演じるのを想像しているの」と、彼の友人ペネロペ・クルスが私に言った。「きっと前と同じくらい魅力的で、素晴らしいはずよ」と。しかし、魅力的だった28歳の彼はドラックをやり、米ロサンゼルスにあったアトランティック・レコードの上階の足場を走り回っていた。あのときの魅力は54歳の彼にとっては拷問のように思える。(クルスとのこの会話は、ロンドンのレストランで彼女とステラ・マッカートニーと一緒に食事をしていたデップが、自力で歯を抜こうとした話題で終わった。)

きっと、永遠のピーターパンであることがスクリーン上のデップの魅力のカギなのだろう。しかし時は過ぎた。少年らしい無頓着さは子供心を忘れない年配の男へと変化した。相変わらずカリスマ性を持っているが、それが見えるのはほんの一瞬だ。最近の彼の人生が晩年のエルヴィス・プレスリーの完璧なコピーでないとするなら、できの良い複写と言えるだろう。

デップとトム・ペティは長い間友情を育んでいて、ペティの死はデップに大きな打撃を与えた。「俺たちは互いに電話し合って『なあ、まだタバコ吸ってるか?』って聞いたものだよ」とデップが思い出を話した。「トムは『ああ、今でも吸ってる』と言うと、俺は『トムもまだ吸っているなら、俺も吸ってもいいな』って思って気分が良くなったよ」と。

これを言った直後、デップは静かになった。たぶん、今自分が言った言葉の悲しさに気付いたのだろう。目をこすって「あいつが大好きだった」と呟いた。

この2人の親友たちが共有していたのはニコチン中毒だけではなかった。二人とも、ロッカーとして成功するためにフロリダからロサンゼルスのウィスキー・タンゴにやってきた(ペティの「Into the Great Wide Open」のMVでデップが完璧に演じていた)。ロサンゼルスで知り合った飲み仲間のニコラス・ケイジが演技で金が稼げると教えたことがきっかけで、デップは進む道を変えた。そして1987年のドラマ『21ジャンプ・ストリート』で演じた高校生の麻薬捜査官役でブレイクする。

Translated by Miki Nakayama

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