石若駿の足跡を辿る、日本のジャズと音楽シーンの人物相関図

 
Photo by Tamami Yanase

アーロン・チューライからの大きな影響


―『坂道のアポロン』の翌年、2013年には初のリーダー作が発表されています。

石若:シン・サカイノ片倉真由子さんとのライブアルバム『The Boomers~Live At The Body&Soul~』ですよね(石若駿Trio名義、タワーレコード限定)。Shin Sakainoも高校生の時のバークリーのサマースクールですごくお世話になって、当時はバークリーを卒業したばかりで、アメリカから一時帰国していた時に録ったんです。

で、あの作品を出したときに「TOWER JAZZ LIVE 2013」というイベントがタワレコ渋谷店の地下で開催されて、そのときの対バンがモノンクル(当時:ものんくる)と、桑原あいのトリオ(ai kuwabara trio project)。僕はアーロン・チューライとのデュオで出演しました。

―モノンクルは菊地成孔さんがプロデュースしていた、ラージアンサンブル編成の頃ですよね。

石若:そうです。その時のモノンクルのメンツが面白い人ばかりで、イベントの打ち上げで仲良くなって。そこでまた世界が広がったんです。


『The Boomers~Live At The Body&Soul~』プロモーション映像。シン・サカイノは「海野雅威 with Special Guest 藤原さくら」の一員として今年のラブシュプに出演する。


桑原あい×石若駿「ディア・ファミリー」(2017年)、同名のデュオ・アルバムも発表された


モノンクル
(DAY2・5月14日出演)
吉田沙良(vo)と角田隆太(b)による2011年結成のソングライティングデュオ。詩情豊かな世界観と洗練されたポップセンスから、感度の高い音楽愛好家や幅広いジャンルの著名アーティストから支持されている。


モノンクル「salvation」(2022年)。ドラムは石若、プロデュース/アレンジは冨田恵一

石若:あと、アーロン・チューライとの出会いもデカいですね。出会ったのは高1の時で2008年くらい。彼は僕の10歳上なんですけど、当時はアーロンの同世代である須川崇志さん西口明宏さん吉本章紘さんがバークリーから帰ってきた頃だったので、アーロンと遊ぶとみんながいるみたいな状況があって、そのシーンも今に繋がってくるんですよね。

―「黒田卓也世代」とも言えますね。

石若:そうですね。吉本さんや西口さんは甲南高校の出身だから、彼らを通じて(同校出身の)広瀬未来さんや黒田卓也さんにも出会ったんですよ。当時、黒田卓也さんが来日した時にJZ Bratでライブをやっていて、僕も遊びに行ってました。

―2010年頃、ホセ・ジェイムズと一緒にやる前の黒田さんですよね。

石若:そこで会ったみんなとイントロに行ってセッションしたりするようになって、高3〜大学1年生くらいの時にニューヨークで活躍している人とも仲良くなったんです。

その頃、自分のなかで自信になった出来事があって。NYで活動しているピアニストの百々徹さんが、中村恭士さんと小川慶太さんのトリオで『JAfro』っていうアルバムを出して、日本でツアーをしたんです。でも、小川さんがアメリカに帰らなきゃいけなくなり、「最後の3日間だけ、駿やってくれない?」と声をかけてもらって僕が叩いたんです。それは自分の中の大きなステップでした。


BANKSIA TRIO(須川崇志、林正樹、石若駿)と江﨑文武、海野雅威の共演ライブ映像


Blue Lab Beats featuring 黒田卓也, 西口明宏 with 鈴木真海子(Chelmico) , ARIWA(ASOUND)
(DAY2・5月14日出演)
今年のラブシュプでは、2021年に名門ブルーノートと契約を果たしたUK新世代ビート・メイキング・デュオ、ブルー・ラブ・ビーツと日本の精鋭アーティストの豪華コラボが実現。トランペッターの黒田卓也、サックスプレーヤーの西口明宏、chelmicoの鈴木真海子、国内最注目レゲエバンドASOUNDのARIWAと共演を果たす。


スナーキー・パピーのライブでソロ演奏を披露する小川慶太(2019年)。小川は今年、スナーキー・パピーの一員として3度目のグラミー受賞を果たし話題となった。

―アーロンに話を戻すと、彼はヒップホップの世界でも知られている存在ですよね。

石若:ジャズピアニストの活動と並行して、いろんなラッパーのビートをたくさん作っていて。その頃、彼と江古田でよく呑んでいたんですが、そこに5lackさん、OIL WORKSのOLIVE OILさん、PUNPEEさんとかが集まった時があって。僕は「アーロンと一緒にドラム演奏しています」みたいな感じで自己紹介して(笑)。そこからKOJOEさんとも出会って、アーロンのバンドセットで何度か一緒に共演しました。

アーロンは一時期、「Don't Call it Jazz」というジャズミュージシャンとビートメイカーが同列に主演するイベントを主催していて、そこにはDaichi Yamamotoや、MANTRAっていうオーストラリアの有名なラッパーも遊びに来てました。


アーロン・チューライ・カルテットのライブ映像(2015年)。ラッパーのKOJOE、吉本章紘(sax)、石若が参加。


2017年、「Don't Call it Jazz vol.1」(東池袋・KAKULULUにて開催)に出演した西口明宏カルテット。メンバーは西口(ts)、アーロン・チューライ(p)、須川崇志(b)、石若。


FKD、石若、アーロン・チューライによるプロジェクト、FIC「One Of Those feat. 仙人掌」(2020年)

―そんなにアーロンの存在が大きかったんですね。

石若:KID FRESINOと一緒にやるようになったのも、アーロンと一緒にライブをやっていたらFRESINOが昼ピ(新宿PIT INNの昼の部)に来てくれて。どうもドラマーを探していたらしくて、マネージャーさんから「今度レコーディングをお願いします」と。それが2016年くらいの話ですね。そこから制作に呼んでもらって、バンドでも叩くようになって、Answer to Rememberにも参加してもらうようになったと。



 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE