ディナー・パーティー徹底解説 グラスパー、カマシ、テラス・マーティンの化学反応とは?

ディナー・パーティー 左からテラス・マーティン、ロバート・グラスパー、カマシ・ワシントン(DINNER PARTY FEATURING TERRACE MARTIN, ROBERT GLASPER, KAMASI WASHINGTON)

 
5月13日(土)、14日(日)に開催される「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN」。2日目・14日(日)のヘッドライナーとして、ロバート・グラスパー、カマシ・ワシントン、テラス・マーティンによるディナー・パーティー(Dinner Party)の出演が決定した。秩父で本邦初ライブを披露するスーパーグループについて、ジャズ評論家・柳樂光隆が解説。さらに、ディナー・パーティーを中心とする音楽コミュニティのつながりをまとめた、柳樂選曲のプレイリスト「"Dinner Party" mellow connection」をお届けする。

ロバート・グラスパー、テラス・マーティン、カマシ・ワシントン、9thワンダーの4人がディナー・パーティー名義で同名EPをリリースしたのが2020年のこと。スーパー・グループによるこのプロジェクトは大きな話題になり、2022年の第64回グラミー賞では最優秀プログレッシブR&Bアルバムにもノミネートされた。同年にはEPの再録アップデート版『Dinner Party: Dessert』もリリース。人気曲の「Freeze Tag」は現在、Spotifyで4000万回再生を超えている。今年3月には、アント・クレモンズをフィーチャーした新曲「Insane」をリリースしたばかりだ。




ディナー・パーティー関連アーティストの楽曲を集めた、柳樂光隆・選曲のプレイリスト。「メロウな選曲をお楽しみください」(柳樂)

【画像を見る】ロバート・グラスパー相関図で関連アーティストをおさらい

ピアニスト/プロデューサーのロバート・グラスパーはジャズとヒップホップ、R&B、ネオソウルを融合させることで、生演奏を軸にした音楽の新たな可能性を提示し、歴史を変えたレジェンドだ。2023年には『Black Radio 3』で5度目のグラミー賞(最優秀R&Bアルバム部門)を受賞。今もシーンの最前線で活躍し続けているのは周知のとおり。

サックスとキーボード、ボコーダーを操るマルチ奏者で、ヒップホップのプロデューサーとしてケンドリック・ラマーからYG、ラプソディからスヌープ・ドッグまでを手掛けてきたテラス・マーティンは、LAのシーンで確固たる地位を築いてきた。NYを拠点にしていたグラスパーとは異なる形で生演奏とヒップホップの融合を目論み、ケンドリック・ラマーによる2015年の大名盤『To Pimp A Butterfly』や、グラミー賞にノミネートされた自身のアルバム『DRONES』(2021年)などでそれを形にしてきた。

テラス・マーティンと同じLA出身のサックス奏者、カマシ・ワシントンもまた現代のジャズシーンを象徴する存在だ。フライング・ロータスの『You're Dead!』(2014年)での鮮烈な演奏で注目を集めたのち、彼が主宰するブレインフィーダーから『The Epic』(2015年)をリリース。壮大なスピリチュアルジャズを軸にした3枚組の大作にも関わらず、ジャズとしては異例の大ヒットを記録した。2018年の2ndアルバム『Heaven and Earth』も絶賛され、近年は映画音楽も手がけつつ、世界中のフェスに出演している。





この3人が集結しているだけでもとんでもないプロジェクトなわけだが、さらにもう一人のビッグネームも加わっている。ヒップホップ界の凄腕プロデューサー、9thワンダーだ。

彼はジェイ・Zと組んでディスティニーズ・チャイルドにいくつかの曲を提供したほか、ケンドリック・ラマー、エリカ・バドゥ、メアリー・J.ブライジ、アンダーソン・パークなどの楽曲も手掛けている。ソウルやファンク、ジャズから連綿と続くアフリカンアメリカンの歴史を受け継ぐようなトラックが持ち味の才人だ。しかも、ケンドリック・ラマー「DUCKWORTH.」ではハイエイタス・カイヨーテをサンプリングし、今年リリースした自身のアルバム『Zion Ⅷ』ではムーンチャイルドのアンバー・ナヴァランとコラボしているなど、過去のサウンドからの影響を取り入れつつ、それを現代的に更新する新たなサウンドも視野に入れている。グラスパーやテラス、カマシがやっていること、さらに彼らの影響下にある次世代にまで理解があるプロデューサーなのだ。


 
 
 
 

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