SawanoHiroyuki[nZk]が語る、2022年の音楽活動、ASKAとのコラボ、エアロスミスの話

トレンドの取り入れ方

―リスナーとしてのそういう積み重ねが、今の澤野さんのサウンドを形成しているんですね。澤野さんは、新しいボーカリストを探すときもたまたま有線で聴いたのがきっかけになったりすることがありますよね。

ああ、そうですね。今回でいうとReNさんは有線でたまたま耳にした方で。そういう形で惹かれるのって海外のサウンドに近いことをやってる人で、ReNさんはまさにそういうタイプですね。

―そうやってたまたま耳にするときって、英語の発音にも惹かれたりするんですか?

しますします。ただ、僕の曲は英詞が多いですけど、必ずしもネイティブみたいに歌ってほしいということではなくて、その人の声が英語になったときにどう表現されるかが重要なんです。なので、ネイティブじゃなくても自分が聴いたときにカッコいいと思わせる発音をしてくれればいいと思ってます。

―なるほど。

例えば、極端な話、本来この言葉の発音は巻き舌ではしないけど、それがカッコよければいいという感覚です。

―あくまでも響きの問題だと。

そうですね。

―話は変わりますが、今作の収録曲って1曲の尺が短くなっていますよね。

意図的に3分ぐらいの尺にしてます。

―それは最近のトレンドを意識してのことですか?

そうですね。最近の洋楽を聴いていると2分半ぐらいで終わる曲もあったりして。そういう曲は何回も聴きたくなるし、スピーディなつくりもわりと好きだなと思って。曲をつくってるとたまに「不必要に間奏を入れる必要あるのかな?」って思うこともあるんですよ。もちろん、「ここは(間奏を)入れたい」っていうこともあるし、そういうものを自然に入れることが大事なんですけど、無理に入れるぐらいならないほうが歌声が続いて好きだなと思うこともあって、だったら自分もそういう構成にしてみようと。

―実際そうしてみてどうでしたか?

自分的にはしっくりきましたね。だからこの先6分ぐらいの曲が流行ったら困っちゃいますね(笑)。それはそれで嫌ではないんですけど。まあ、いい具合にスタイリッシュで、なおかつ起承転結や抑揚も入れてつくれるのは自分的には合ってると思います。

―壮大なつくりの楽曲がお好きなのかと思っていたので意外です。

もともとサビの前をどうするかっていうことを考えながらAメロBメロをつくっていたところがあるんですけど、不必要に悩んじゃうぐらいならサイズを落とすことによってスムーズにつくれるようにするのも自分には合ってるんだと思います。

―だからなのか、今作はよりメロディが際立っている気がしました。

ああ、本当ですか? ありがとうございます。確かにそうかもしれないですね。短い曲の中でどういうメロディにするかというところに意識を持っていけたと思います。

―澤野さんはいいと思ったらすぐにトレンドを取り入れるタイプなんですね。そのとき聴いている音楽に影響を受けやすいというか。

影響を受けやすい部分もありますし、なるべくそうでいたいなって今は思ってて。

―それはなぜですか?

人によるとは思うんですけど、海外のアーティストはベテランになってもそのときのトレンドをうまく取り入れながら曲をつくっていて。それは劇伴も同じで、ハンス・ジマーもそう。でも、日本ではベテランになっていくとすごくシンプルな編成・サウンドになっていくことが多いじゃないですか。それには理由があるだろうし、決して悪いことではないんですけど。

―はいはい、わかります。

でも、やっぱり時代に対応した新しいことをやるほうが難しいと思うんですよ。シンプルな構成だからこそ難しいという意見もあるけれども、僕は新しいことを採り入れてつくっていくことのほうが難しいと思っています。なので、それに対応している海外のアーティスト……マルーン5みたいな人たちはすごいなと思ってます。自分も海外の音楽から影響を受けているのであれば、ちゃんと新しいものを採り入れてアウトプットしていけるような作家でありたいと今は思ってますね。

―ギタリストのマーティー・フリードマンさんが、J-POPはコードとかが凝っていて素晴らしい、Official髭男dismやKing Gnuみたいな人たちの人気があるのはいいことです、というような話をよくしていて。そういう話を聞いて澤野さんはどう感じますか?

確かに日本ならではのコードのこだわり方は重要なのかもなと思ったりします。それこそ、今回参加していただいたASKAさんもコードにこだわっている方で僕も影響を受けているので重要なのかなと思ったりしますし。だけど、ワンリパブリックみたいにシンプルなコード進行の上でメロディがいろいろと展開していくという曲も好きなので、どちらもいい形で共存していったら面白いと思います。

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