SawanoHiroyuki[nZk]が語る、2022年の音楽活動、ASKAとのコラボ、エアロスミスの話

ロックに目覚めたきっかけ、エアロスミス

―「86」に話を戻しますけど、たかはしほのか(リーガルリリー)さんが歌う「LilaS」が本当に素晴らしくて。

あれはもう、映像やたかはしさんの歌詞とかいろんなものがうまくリンクしたなと思います。



―おっしゃる通り、歌詞と映像の連動が鳥肌モノで、かなり緻密につくられたのかなと思ったんですけど。

曲に関しては「最終回に特別エンディングとしてバラードを流したい」という話だけもらっていて、自分の中でなんとなく「こんな感じかな?」っていうものを出しました。

―OPやED主題歌はもちろんのこと、最終回に一発だけ流れる曲というのもプレッシャーじゃないですか?

自分はそこまでプレッシャーを感じないでつくっちゃうほうかもしれないですね。幸いなことに、「86」は劇中の音楽も担当させてもらっていたので気負わずにつくれたところはあるかもしれない。

―そうなんですね。「86」という縁があったからこそだとは思うんですけど、たかはしほのかさんの声のテイストはこれまで[nZk]に参加してきたボーカリストとは毛色が異なりますよね。

そうですね。彼女の独特な歌の表現に関して、はじめは自分もこのサウンドと合わさったときにどうなるかなと気になっていましたけど、彼女の歌詞の世界観と、楽曲に合わせた歌声がいい感じにハマったと思いますし、映像の中で流れたことで作品との親和性がいい形でお客さんに伝わったと思うので、一緒にやれてすごくよかったですね。

―澤野さんは力強さや色気があったり、ハスキーなボーカリストを好む傾向があると思っていたので、この曲はすごく新鮮でした。

自分で選ぶとなるとそういうボーカリストが多くなるんですけど、[nZk]って自分から「こういう方とやりたい」って提案することもあれば、「こういう方とのコラボはどうですか?」って企画されることで「ああ、それは面白いことになるかもな」っていうこともよくあるんですよ。たかはしさんはまさにそういう形でやれたと思います。

―力強さや色気のあるボーカリストをよく器用されるというのは、そういう声質がご自身のサウンドに合うと思っているからなのか、それとも単純にそういう声が好きなのか、どちらなんでしょう。

もともとそういう声の人が好きだったりしますね。普段、僕は洋楽をよく聴いているんですけど、洋楽にはそういう声のアーティストが多くて、自分もそこに影響を受けて曲をつくっているので、自然とそういう声をイメージしていることが多いのかもしれないですね。

―海外のボーカリストに歌ってもらうっていうのはどうなんですか?

もちろん、やれるならやりたいですね。

―歌ってほしい海外のボーカリストって挙げられますか?

単純に好きなアーティストになっちゃうんですけど、僕はずっとワンリパブリックというバンドとこのバンドのボーカリストの声がめちゃくちゃ好きなので歌ってもらいたいですね。女性だとホールジーとかシーアとかデュア・リパが好きなので、そういう名前はぱっと浮かびます。

―では、最近のアーティスト以外、オールタイムで選ぶとどうですか?

僕、洋楽は好きなんですけど、60~70年代のものはそんなに聴くほうではないんですよ。それよりも80年代以降のいろんなジャンルを採り入れてるものが好きで、ロックも、いなたいものよりもプロデューサーが入ってエンタメ感が出てるものが好きなんですよ。例えば、エアロスミスも初期よりも活動休止から復活した80年代以降の作品が好きだったりします……ああ、僕はロックに目覚めたきっかけがエアロスミスなので、そういう意味ではスティーヴン・タイラーに歌ってもらいたいですね。

―エアロを好きになったきっかけは?

『GET A GRIP』(1993年)ですね。もちろん、それまでに洋楽を聴いたことがなかったわけではなくて、ボン・ジョヴィとかミスター・ビッグみたいな、当時日本で流行ってたロックは聴いていたんですけど、ギターを始めた中3の頃に先輩が「ロックっていうのはこういうもんをいうんだよ」って貸してくれたのが『GET A GRIP』で。それまでそんなに洋楽を聴いてきたわけでもないのに、このアルバムを聴いたときに「あ、洋楽のカッコよさってこれか!」って思ったんですよね。それまで好んで聴いてたロックはメロディアスだったりわかりやすいものだったんですけど、このアルバムの(実質的な)1曲目「EAT THE RICH」なんてサビは”EAT THE RICH!”って言ってるだけなのに、その後ろで鳴ってるギターのリフがすごくカッコいい。そういうロックのカッコよさに気づかせてくれたのがエアロスミスだったんです。



―ああ、わかります。ボン・ジョヴィとかはどちらかというとメロディを聴かせるものが多いですもんね。

そう。だから中学生にもわかりやすかったんですよ。もちろん、エアロスミスにもメロウな曲はあるんですけど、「EAT THE RICH」は当時の自分にとっては新鮮でしたね。

―それをきっかけに「じゃあ、昔のアルバムってどうなんだろう?」と思って、初期の作品を聴いてみるとちょっと拍子抜けするんですよね。もちろん、カッコいいアルバムはありますけど。

そうなんですよ。サウンドもちょっと違って。僕はちょっとオーバーに鳴ってるスネアが好きなので、そういう意味では後期のほうが好きなんですよね。だから、エアロスミスでいま一番好きなアルバムを聞かれたとしたら『Just Push Play』を挙げます。このアルバムの1曲目の「Beyond Beautiful」って曲がすごく好きで、それが自分のロックサウンドをつくっていく上でのお手本になってます。



―へぇ~! 意外なチョイスです。

スネアとかエレキギターの音はこのアルバムに憧れてつくりはじめたところがあるぐらい好きで、今でもよく聴きますね。往年のエアロスミスファンからすると邪道なのかもしれないですけど、僕にとってはあれがすごくカッコいいアルバムだし、「やっぱ、エアロスミスはすげえな!」と思った1枚ですね。

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