森山良子が語る自身の歌手活動、1974年から1983年まで

虹の彼方に / 森山良子

森山:クリスマスソングの中に1曲だけ「虹の彼方に」を歌いました。

田家:ニューヨーク録音はある種の目的があったんでしょう?

森山:アメリカのキラキラ光るクリスマスのアレンジメントの雰囲気ってありますよね。そういう感じのアルバムを作りたいというふうにスタッフが言って、それで上がってきたのがゴードン・ジェンキンズというお名前だった。私はその時ゴードン・ジェンキンズを存じ上げなくて。父は昔から音楽が大好きでミュージシャンだったりして。

田家:フランク・シナトラと言えば、ゴードン・ジェンキンズみたいな(笑)。

森山:そうですよね! たくさんの人を手掛けてきていて、父が子どもの頃からすごく有名な方だったらしいんです。父に「ねえ、ゴードン・ジェンキンズって知ってる?」って言ったら、「もちろん知ってるよ!」って。「なんでゴードン・ジェンキンズの名前を言ったの?」って言うから「クリスマスのアルバムをニューヨークで彼と一緒にレコーディングするの、アレンジメントしてくれるの」って言ったら、「ええー! 僕は君が自分の娘だなんて信じられない!」って驚いたんです。それだけうちの父の中では最高のビッグネームでアレンジメントも素晴らしいしって言って、とにかく父が誰よりも興奮して、通訳がてら一緒にくっついてきて。

田家:あ、そうなんですか! ものすごい親孝行なレコーディングだったんだなあと。

森山:このレコーディングもタララララ♪って演奏が入ったりする時も、ミュージシャンの顔を見ないんです。ずっと私のことを見ていて、私の心の中からいろいろなものがゴードンに対しての想いがわーっと音楽に乗って出てくる感じ。もう恋をさせられているような感じで、毎日ハートに矢の刺さったカードをくれて、「僕は君と出会えて本当に最高だよ、胸が痛む」みたいな。「本当に君は素晴らしいシンガーだ」とか、「君はアメリカのどんなプロフェッショナルとも対等に歌えるシンガーだから自信を持つように」とか、「自分がたくさんの人たちと仕事をしてきたけれども、同等だから絶対にひるまず歌っていくように」って毎日自信をどんどんつけてくださるんですね。それはアメリカ人特有と言えばそうなのかもしれませんけれども、私は生まれて始めて本当に大きな自信をつけさせてもらったと思いました。

田家:指揮をしながらミュージシャンではなくて、歌っている人の顔を見ていたというのもすごい話だなと思いました。今日最後の曲はゴードン・ジェンキンズプロデュースアレンジで良子さんが作曲されたオリジナルです。1983年3月発売「セ フィニ ~愛の幕ぎれ~」。

Rolling Stone Japan 編集部

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