ビョークが語る「きのこアルバム」の真意、アイスランドのジェンダー平等と環境問題

地球の声に耳を傾けること

─映画の話をしましょう。『ノースマン 導かれし復讐者』(2023年1月公開予定)に出演していますね。出演を決めたきっかけや作品について話していただけますか?

ビョーク:友人のショーン(シーグルヨン・ビルギル・シーグルソン)に頼まれたとでも言いましょうか。ショーンは、ロバート・エガース監督と共同でこの映画の脚本を手がけました。私が紹介したんです。すると、出演してほしいとショーンに言われました。ショーンはアイスランド出身の作家です。ご存知ではないかもしれませんが、「Bachelorette」や「Isobel」などの曲の歌詞を書いてくれました。

ショーンとは、私が16歳のころから友達です。そのせいか、互いの頼み事は断れない関係なんです(笑)。ショーンは、私のお願いにいつも「いいよ」と言ってくれましたから、今度は私がショーンの願いを叶えてあげたかったんです。映画を通じてアイスランドの歴史のダークな側面やバイキングたちの違う姿を見せられることにも惹かれました。

バイキング——とりわけアイスランドにやってきたバイキングはかなり誤解されていると思います。イングランドとバイキングは、敵対関係にありました。強国イングランドが唯一倒すことができなかったのがバイキングだったのです。歴史書は、イングランドの作家によって書かれています。ですから、彼らはバイキングを怪物のような存在として描写しました。

正直にいうと、当時のバイキング文化とほかの民族の文化には、それほど大きな違いはなかったと思います。(現代のバイキングの描写は)かなり偏っているよね、とよく友人たちと一緒に笑っています。だって、イングランドだっていくつもの国を侵略したじゃないですか。全部で70カ国とか?(笑)今日の考古学がハイテク化しているのも興味深いですね。DNA解析のおかげでいろんな発見がもたらされています。それによると、バイキングにも詩や神話といった豊かな文化があったこと、それらがきわめて高度だったこと、工芸品作りが盛んだったこともわかっています。バイキングは単なる殺戮マシンではありません。確かに、暴力的ではあったかもしれませんが、1000年当時はどの民族にも何かしらの敵がいたと思います。



─かねてよりアクティビズムを重要視されています。環境問題への関心に留まらず、チベットやコソボの独立、MeToo運動なども支持されていますね。いま、いちばん関心があることは何ですか?

ビョーク:環境問題が私の最優先事項であることには変わりありません。いま、行動することの大切さを実感しています。次の世代の人々のためにも、行動しなければいけません。できる限りのことをしなければ、いま生まれている子供たちに良心の呵責をまったく感じずに地球を引き継いでもらうことはできないと思います。

パンデミックによって、私たちは世界中の国や政府が迅速に連携できることに気づきました。国境を閉鎖したり、ワクチンを開発したりと、いろんなことが前代未聞の速さで行われました。これを機に、私は人々の意識が環境に向かうことを期待していました。緊急事態として環境問題に取り組むことを。残念ながら、期待したほどの変化は起きていません。私たちは、もっと努力しないといけません。もちろん、私も含めて。

─パンデミックは、自然から人類へのメッセージのようなものだったのでしょうか?

ビョーク:そうだと思います。私たちはパンデミックを生き延びることができましたが、地球の声に耳を傾けることは大切です。私は、こうした問題は世代交代によって解決するのではないかと期待していました。いま、地球に悪い影響を与える選択肢をとっている世界の権力者や政治家は70代の高齢者です。でも、いずれは私たちの次の世代が彼らに取って代わるでしょう。それまで地球が持ちこたえられるかはわからないけれど。状況はあまり芳しくないですね。

【画像を見る】ビョークの最新モード(全8点:記事未掲載カットあり)




ビョーク
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ビョーク来日公演
最新型の<cornucopia>と古典的な<orchestral>、「⼆⼈のbjörk、⼆つのbjörk」を体験

<orchestral>
2023年3月20日(月)東京 ガーデンシアター
2023年3月25日(土)神⼾ワールド記念ホール
<cornucopia>
2023年3月28日(火)東京 ガーデンシアター
2023年3月31日(金)東京 ガーデンシアター

詳細:https://smash-jpn.com/bjork2023/

Translated by Shoko Natori

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