デーモン・アルバーンが語るアイスランドへの愛と感謝、ブラーとゴリラズの未来

デーモン・アルバーン(Photo by Linda Brownlee)

デーモン・アルバーンが最新ソロアルバム『The Nearer the Fountain, More Pure the Stream Flows』の着想源となったアイスランド、ゴリラズの新作アルバム、ブラーとしてのツアー再開について語る。

幼少期、デーモン・アルバーンは黒い砂の広大な大地の上を浮遊するという夢を繰り返し見た。目覚めるときはいつも、この精神的な旅からパワーをもらった気がした。だが、それがいったいどこなのかはさっぱりわからなかった。90年代半ば、ブラーが全米ツアーを行なっている最中に偶然、アイスランドを特集したナショナル ジオグラフィックのテレビ番組を観るまでは。「僕がずっと夢で見てきた場所は、ここかもしれないと思ったんだ」と、デーモンはローリングストーン誌に語る。「だから僕はアイスランドに行き、この場所と恋に落ちた」

1997年に初めてアイスランドを訪れて以来、デーモンは毎年3〜4回は同地を再訪している。数年前には、島に家まで購入してしまった。デーモンのアイスランド愛は、ニューアルバム『The Nearer the Fountain, More Pure the Stream Flows』という形で結実した。11月12日にリリースされる今作は、アイスランドの自然の風景からインスパイアされたコンセプトアルバムだ。当初はオーケストラとのレコーディングを計画していたものの、新型コロナのパンデミックによってクルーの人数を削ることになり、デーモンを除いてたった2名のミュージシャンが参加する結果となった。

「クルーズ船に乗り込んだハウス・バンドのような気分だった。船はどこか知らない場所に停泊してしまって、僕ら以外に乗客は誰もいない」とデーモンは言う。「僕が求めていたのは、まさにそんな雰囲気さ」



プロジェクトの始まりは2020年1月にさかのぼる。ロックダウンが敷かれる約2カ月前だ。当時、デーモンはアイスランドの自宅にミュージシャン15名を招いた。計画のねらいは、窓から家の周りの風景をただ眺め、自然の美しさをとらえて音楽として表現することだった。

「ここでは、何もかもが驚くほど生き生きとしているんだ。緯度が高いし、空気も軽いから」と彼は言う。「光と気温、そして風速が極端なんだ。毎年決まった時期になると、自宅の前の芝生が風の動きによって凹んだり移動したりする。まるで外の世界全体が奇妙な渦に巻き込まれているかのようだ。とてもエクストリームな場所だ。僕らはまさにこうした点を活かそうとしているんだよ」

デーモンはイングランド南西部のデヴォンの別宅に戻り、アイスランドでコラボレーターのミュージシャンたちと手がけた楽曲をオーケストラと一緒にレコーディングすることを企画した。だが、コロナ禍によってこのプロジェクトは何カ月にもわたって休止せざるを得なかった。「アイスランドでは完璧なものがつくれたと思ったんだけど、世界は違っていた。それに、僕自身もまったく違う環境にいた」とデーモンは語る。「その瞬間の僕の感情ないし僕の内面世界を表現したかったんだ」

2021年1月、デーモンは、サイモン・トング(ザ・グッド、ザ・バッド・アンド・ザ・クイーンのバンド仲間)と、長年ブラーとゴリラズのツアーメンバーを務めたマイク・スミスと一緒にデヴォンのスタジオに入った。たった数週間で、彼らは1枚のアルバムを作り上げてしまったのだ。「僕がアイスランドで築いたムードがすべてのベースになっているんだ」とデーモンは言う。「全体を通じて、オーケストラのリハーサルテープが流れている」

Translated by Shoko Natori

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