遅咲きのカントリー・シンガー、スタージル・シンプソンが「変身」できる理由

シンプソンの日常

レコードレーベルからの縛りもなく、ツアーのプレッシャーもない。何かしなければならないとか、次に何をするかという期待も受けない。「彼は今、最高に自由な立場にいる」と、ルーク・ルイスは言う。ルイスはロスト・ハイウェイ・レコーズの創業者で、シンプソンの釣り仲間でもある。ケイシー・マスグレイヴスやクリス・ステイプルトンらと契約しているルイスは、「素晴らしい楽曲を作るが、ラジオ受けする気はない」シンプソンのようなアーティストに関心を寄せてきた。

当面のシンプソンの生活は、今と変わりないようだ。ナッシュビルのライマン公会堂やニューヨークのウェブスター・ホールなど、いくつかのコンサートが決まっている(註:その後、喉の不調のためキャンセルとなった)。しかしシンプソンは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを憂慮している。音楽のように、直感に従って誰からも強制されないやり方で取り組めるのであれば、シンプソンはもっと役者の仕事をするかもしれない。しかし彼自身は、自分を役者だとは考えていない。どこでも表現できる場所を求める、単なるクリエイターだと思っている。「俺が聴いたことのない音楽がこの世にまだあるかどうかは、わからない」とシンプソンは言う。「でも世の中には、これまでにない映像を作ろうと努力している制作者がいるのは間違いない」

ナッシュビルのシンガーソングライターであるブリット・テイラーの最新アルバムなど、シンプソンは、友人でもあるデビッド・ファーガソンやエンジニアやプロデューサーとのプロジェクトをいくつか抱えている。そのほかにも、サッカーゲームや野球ゲームの相手に加えて、学校へのお迎えの仕事もある。彼は最近、アーチェリーや自動車レースにも凝っている。そしてもちろん、鞍にまたがる時間も長い。

シンプソンがジープに乗り込むと、バーンも彼に従って後部座席に飛び乗った。ガラガラヘビの姿を見ることはなかったが、道場を出る前にシンプソンは、切り取ったヘビの尻尾をひとつテーブルの上に滑らせてよこした。筆者へのお土産だった。

「将来は進化して、ガラガラと音を立てなくなるだろう」とシンプソンは言う。「音を出すせいで多くが殺されてしまうと知れば、奴らはもう音を奏でるのを止めるだろう」

from Rolling Stone US

<INFORMATION>


『The Ballad of Dood and Juanita』
スタージル・シンプソン

配信リンク:
https://orcd.co/doodandjuanita

収録曲
1. Prologue
2. Ol’ Dood (part I)
3. One In the Saddle, One On the Ground
4. Shamrock
5. Played Out
6. Sam
7. Juanita (featuring Willie Nelson)
8. Go In Peace
9. Epilogue
10. Ol’ Dood (part II)


Sturgill Simpson/スタージル・シンプソン
1978年、米ケンタッキー州ジャクソン生まれ。父親の影響で幼い頃にブルーグラスやカントリー・ミュージックに触れた彼は、成長するにつれロック、祖母からの影響でサム・アンド・デイブ、オーティス・レディングなどのソウルを聴き漁っていたという。高校卒業後、アメリカ海軍に入隊。横須賀基地で勤務し3年ほど日本で過ごす。除隊後はアメリカに戻り、鉄道会社で勤務。音楽の夢を諦められずナッシュビルに移住し、2013年自主制作した1stアルバム『High Top Mountain』が全米で31位を記録。2014年にアルバム『Metamodern Sounds In Country Music』を発表、アメリカン・ミュージック・アワードでは「2014年に最も飛躍したアーティスト」に選出され、第57回グラミー賞では「ベスト・アメリカーナ・アルバム賞」にノミネートされるなど全米で大ブレイク。2015年には大型フェスティバルBonnaroo、Lollapallozaに出演し、数々の人気番組にも登場するなど、凄まじい勢いで全米での知名度を高めた。2016年に3枚目となるアルバム『A Sailor’s Guide to Earth』をリリース。米iTunes初登場総合1位、米ビルボード・チャートで3位を記録。第59回グラミー賞において「最優秀アルバム賞」にノミネートされ、「カントリー・アルバム賞」を受賞。2017年のフジロック・フェスティバルにも出演している。2019年発表の4作目『Sound & Fury』ではアニメーションスタジオ「神風動画」とタッグを組み、アメリカン・ロックとジャパニメーションを革新的なアプローチで融合させたハイブリッド・アニメーション作品を発表。映像作品は、Netflixにてアルバムのリリースと同時に公開され話題に。2020年、コロナ禍でチャリティーの一環として発表した2枚のセルフカバーアルバム『Cuttin’ Grass Vol.1, Vol.2』をリリース。現在、マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオがタッグを組んだ映画、『Killers of The Flower Moon』 に出演が決定、

Official Website:
https://www.sturgillsimpson.com/

YouTube:
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Instagram:
https://www.instagram.com/sturgillsimpson/

Translated by Smokva Tokyo

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