悲劇の死刑因、25年間にわたる「闘争と不条理」

新たな証言

ナイト弁護士は過去6年間、本人の言葉を借りれば、グロシップのこれまでの弁護士が本来やるべきだった仕事に取り掛かった。彼は、グロシップがヴァン・トレーズから横領したわけではなく、単にホテルの収入が本来の数字と合っていなかっただけだ、ということを証明できる法廷会計士を雇った。

またスニードの犯行――それも単独犯行であると証言する数人とも話をした。ナイト弁護士はこれら証人からとった4つの陳述録取をローリングストーン誌に提供してくれた。これらの陳述からは、法廷で州が提示したスニードとはまるで違う人物像が浮かび上がってくる。グロシップの再審が認められた場合、ナイト弁護士は彼らを証人として判事に要請するつもりだ。

そのうち1人の証人候補は、最初に収監された時のスニードをよく知る囚人仲間だ。彼の陳述によれば、はじめの頃スニードの話は二転三転したという――匿名のその男はスニードがメチルアルコールをやっていたせいだと考えていた――だが彼はグロシップが関与したとは一度も言わず、関与していたのはおそらく恋人だけだったようだ。「スニードは他とは違う人間でした」と陳述でその男はこう記し、ヴァン・トレーズは歯向かうべきじゃなかったんだ、というスニーズの言葉を付け加えている。

スニードと同じ刑務所にいた別の男も、ヴァン・トレーズはスニードの恋人の「パパ」で、2人は付き合っていたのだとスニード本人から聞いた、と陳述した。その恋人は、その日上司が2~3万ドルの大金を持っている、とスニードに話したらしい。女がヴァン・トレーズを102号室に誘い出し、そこでスニードが金を奪って逃亡するはずだった。上司を殺した後、スニードは金がたった4000ドルだったのでがっかりした。「時々スニードは、はした金のために男を殺したなんて信じられない、と言っていました」とその証人は記した後、当時スニードが一番気にしていたのは死刑にならないこと、それと恋人を刑務所送りにしないことだった、と付け加えた。

ホテルの隣のクラブで働いていたダンサーの陳述は、グロシップではなく恋人が関与していたという主張と一致する。「ファンシー」という名で知られていたその恋人は、スニードと金をくれるヴァン・トレーズの両方と付き合っていたそうだ。ダンサーによれば、スニードは薬に溺れるようになり、その時は「怖かった」そうだ。クラブの女性を使ってホテルの男性客を脅しては金を奪い、自分は絶対に見つからない遺体の隠し場所を知っていると豪語し、友人に「金とドラッグを調達」すると宣言した後で血まみれになって帰ってきたこともあった。その女性の記憶によれば、ヴァン・トレーズの事件後ファンシーは顧客の運転で湖へ向かい、そこでスニードの代わりに箱を処分したという。その後ファンシーは姿を消し、別のダンサーに「この事件で刑務所に入れられるもんですか」と言ったそうだ。

「これらはみな実在する人々で、いずれも本人たちの言葉です」と、ナイト弁護士は言う。「時がくれば証人と呼ばれるでしょう――時がくればの話ですが」

Translated by Akiko Kato

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