悲劇の死刑因、25年間にわたる「闘争と不条理」

「政界にいる人間からは無視される」

グロシップによれば、「death watch」の監房にはカメラ1台と看守1人が配置され、昼も夜も明かりはついたままだ。持ち込みが認められるのは聖書と家族の写真、ペン1本と紙だけ。そのまま何も起こらない日もあるが、別の囚人の旅立つ姿を見送る日もある。

人生最期となるはずだった食事も三度味わった。メニューは毎回同じ、フィッシュ&チップスにウェンディーズのベーコネーター、ストロベリーシェイクにピザ。そのうち1回はピザハットで、2回はドミノピザだった。そして彼は再び始終明かりのついた中に放り込まれて死を待つことになる――彼の弁護士が最後の望みの綱である再審を獲得できなければ。

グロシップが死刑囚房に入れられたのは2015年。彼の弁護士であるドン・ナイト氏が州を説得して、再審が行なわれない限り、またもや死刑囚房に入れられる可能性は高い。しかしグロシップは、2015年よりも望みはあると感じている。

ナイト弁護士は死刑支持派の共和党28人を含む34人のオクラホマ州議員が署名した嘆願書をケビン・スティット州知事に送り、独立機関によるグロシップ事件の再調査を要請した――それに加え、グロシップの無実を証明できるとナイト弁護士が言う複数の証人の証言も。「この手のことは政治的自殺行為ですから、政界にいる人間からは無視されるのがほとんどです」。オクラホマ州立刑務所からローリングストーン誌の電話インタビューに応じたグロシップはこう語った。

「だからこそ僕も、署名してくれたオクラホマ州の共和党議員には敬服しています……彼らにも言いましたが、彼らが立ち上がったのはこれが政治的立場とは関係なく、無実かどうかという問題だからです。そもそも政治を絡めるべきではありません。両党が歩み寄るべきです。誰だって無実の人を死なせたくはないでしょう」

ナイト弁護士やグロシップの支持者たちによれば、州の見解にはつじつまが合わない点がいくつかあり、判決に関して疑問が残るという。「有罪の人間が死刑にかけられることには私も賛成です」。グロシップを支持する書簡に署名した34人の議員の1人、オクラホマ州下院議会のケヴィン・マクデュール議員はこう語る。「ただ私は、オクラホマでは死刑にかけられる人間が必ず有罪であると自信を持って言えるメカニズムが存在することを確認したいだけなのです」

ナイト弁護士は2014年からグロシップを弁護している――1993年の書籍『デッドマン・ウォーキング』の著者で、死刑制度廃絶運動の主要人物であるシスター・ヘレン・プレイジェーンの依頼によるものだ。もともとグロシップは、死刑執行の際に同席してほしいとプレイジェーンに頼んだ。「ええもちろんです、執行されるときはそばにいますよ、と約束しました」とプレイジェーンはローリングストーン誌に語った。「その後就寝しましたが、夜中の2時に突然目が覚めました。彼を死なせてはいけない。無実の人間は死ぬべきじゃない、と」


オクラホマ州マカリスターにあるオクラホマ州立刑務所の前で、シスター・ヘレン・プレイジェーン氏、キャスリーン・ロード氏、ドン・ナイト弁護士(Photo by Sue Ogrocki/AP)

当初グロシップの死刑は2015年1月に行なわれる予定だった。だがグロシップが連邦最高裁判所に起こした訴訟、いわゆる「グロシップ対グロス」のため、刑の執行は延期された。2014年に行なわれたクレイトン・ロケット死刑囚の処刑が失敗に終わった後、彼と19名の受刑囚は移送命令と刑の延期を求める嘆願書を提出した。ロケット死刑囚は薬殺刑の途中で意識を取り戻し、おぞましい死を迎えた。

受刑囚たちはミダゾラム――ロケット死刑囚の処刑失敗の原因とみられる麻酔薬――の使用が残忍かつ尋常ならぬ刑罰だと主張した。2015年6月、最高裁はグロシップ他受刑囚の訴えを退けた。その時点で、彼の死刑執行は同年9月に予定された。2回目の延期が訪れたのは死刑執行の3時間前だった。この時は、ナイト弁護士による再審請求が検証された。最終的に判事は再審に十分な証拠がないと判断し、グロシップの刑の執行を9月30日に延期した。同じ日に州は誤った薬物を使用したことを認め、その後死刑執行は6年間見送られた。

Translated by Akiko Kato

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