SIRUPと手島将彦が語る、当事者ではないからこそ知っておくべきメンタルヘルス

ーメンタルについての認識や知識を浸透させていく上で、学校教育に盛り込むのも一つの手ではあるかと思いますが、それよりも自分の好きなタレントやミュージシャンがそういう発信をしてくれた方がもっと抵抗なく受け入れられるのかなと思うんです。

SIRUP:逆も然りだと思っていて、そもそも誰もが少なからず発信力と他者に影響を与える可能性を持っている以上、発信力の有無に関わらず誰もが意見を発信する権利とある程度の責任があると僕は思います。ネガティブな風に見れば、SNSの誹謗中傷で人が殺されている。ちょっとした言葉が他人を傷つけていることに気づけない状態になってしまっている。特に、日本は自己責任の概念と恥の文化なので、傷ついてしまう自分が弱いんじゃないかと思って溜め込んでしまうこともある。だからこそメンタルヘルスなどの知識や経験に関しては「発信力があるのに」とか、「発信力がある人にしか出来ない」という状況が改善すればいいなと思っています。

手島:影響力ということで言えば、ミュージシャンを目指している若い学生にはいつも話すんですけど、例えば目の前の5人が感動してくれることってとても大事なことなんですよ。すべては少人数からの積み重ねなんですよね。YouTube1000万回再生とか年々数字を重視する流れが加速していますけど、基本は1からっていうことは忘れないでほしいです。

SIRUP:本当に合点がいく言葉ですね。例えば「たくさんの人に曲を聴いてもらいたいです」の「たくさん」って誰やねん、って思うんです。僕のやっている音楽ってR&BとかHIPHOPがベースにあるので、それが好きな人に届けばいいなと思っています。なんとなく皆が知っている状態になることが売れるということで、その状態にならないといけないのか? と言われたら、そうじゃない。好きなことやってご飯食べていけたらそれで良くないかな? と。それが明確であればあるほど、自分が何をすべきかどんどん分かってくると思う。自分はたくさんの人の前でライブをできるようになりましたが、最前列の1人がすごく感動していたらそれでいい。もちろん皆が満足する努力はしていますが、5人しかお客さんがいない中でも、その中の誰かを感動させられたら絶対に次に繋がるし、その積み重ねが今に繋がってる。本当に手島さんの仰るとおりだと思います。

手島:根底にそういう考えを持っていられればメンタルを保っていられるのかなと思いますね。これって、何かや多数の誰かの役に立たないといけないという思い込みと似ていると思うんですよ。誰かが存在するのに条件はいらないんです。音楽だって、結果として役に立つことはあっても、必ずしも、多数の誰かの役に立つためにやっているわけじゃなくて、元々はその人自身の存在のためにやっていると思うので。それに、どんなことでも役に立つこともあれば役に立たないこともある。多数の他のために、ということを基準にしすぎると、自分を含めた誰かの存在否定に行きついてしまう危険があります。

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