SIRUPと手島将彦が語る、当事者ではないからこそ知っておくべきメンタルヘルス

手島:かといって、勘違いし「マルチにできるのがいい」っていう流れもあると思います。

SIRUP:僕の世代も下の世代も、自己プロデュースとか自分で全部できる人はすごいよねって皆が言っていた風潮があって。僕も全部できるようになろうと思ってやってみたけど、できないことは誰かに委ねる方が広がっていくし、アートとしても楽しい。それに気づいたのがターニングポイントでした。結局、自分の特性がフルで生かされる状態で活動できることが一番良いんだと思います。

手島:自立・自律するって言うと全部自分でやるイメージを持つ人が多いけど、本来は自分はこれができるけど、あれはできないから他の人に任せようという適切な依存場所を見つけることなんですよね。足が折れたときに松葉杖が必要っていう話と一緒で、別に頼っても良いんですよ。なんでもできる人はそれで良いですけど、本当の意味でなんでもできる人はいない。一見なんでもできる人は何かを削っていることが多いですよ。人間ってすごく得意なこととすごく苦手なことがあると思うんですけど、その真ん中には、頑張ればできるけど楽してできることじゃないことがたくさんあって、それをやりすぎるときつくなる。程よく外注しないともたないですよね。

SIRUP:僕も最近みたらし加奈さんという臨床心理士の人と、個とはなにか? 孤独とはなにか? という話をしていて。ミュージシャンは孤独との向き合い方を見つけたほうがいいと思っている中で、依存とは何かを考えているんです。バランスが難しいとは思いますが、全員なにかに依存しているに決まっているのだから、「こういう時はこうしたい」とか相手に言っていいんだと考えるようになりました。そうやって周りの人たちと付き合えばいいし、分かってもらえる人と付き合えばいいのであって。でも依存がダメだと言われると、心を矯正していくうちにおかしくなっちゃう。「依存がダメだ」って考え方自体がなくなればいいなって思います。

手島:依存が悪いっていうことの終着点が自己責任ですよね。自己責任は0じゃないと思うけど、なんでも自己責任なんて言ってたら生きていけないと思います。

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