アルファレコード元ディレクターとともに1980年代の作品を振り返る

あの頃のまま / ブレッド&バター

田家:1979年6月に発売になったブレッド&バターの「あの頃のまま」。コロンビアからアルファに移籍してきた一作目。作詞作曲がユーミンで、アルバム『Late Late Summer』と同時発売でした。この曲を選ばれたのは?

有賀:私のところにブレッド&バターを紹介した人がいて、最初にシングル曲を決めないといけないということでユーミンに頼んで。会議室で、どの曲がシングルにいいか決めるわけです。彼らは自分たちの曲が一番いいと思っているわけで、僕は結構俯瞰で見ていて「あの頃のまま」がいいと。作詞作曲はユーミンですから、実は歌うのは難しいんじゃないかなと思ってたんです。先週、ユーミンの曲には一回も文句を言ったことがないと話したんですが、この曲については文句があったんですね。歌詞の内容が、学校を卒業して会社員になったけれど、相変わらずサーファーのままでいたいという男の人の話だったんです。サーファーのままでいたい男が、会社員になった人を羨ましい、と思う表現が歌詞にあった。それは違うと思った。君の生き方も素晴らしいんだけど僕の生き方も素晴らしいんだ、という内容にしてくれないかとユーミンに言って。彼女はしばらく考えて、明くる日に出来てきたのが素晴らしい作品になっていたんですね。

田家:なるほど、サラリーマンになれないからサーファーをやってるわけじゃないんだ、という曲になった。それはディレクターの一言が名作を生んだというエピソードですね。お聴きいただいたのは、3月に発売になったライブ映像『ALFA MUSIC LIVE』から、ブレッド&バターの「あの頃のまま」でした。この後は彼らのMCを聴いていただきます。

ブレッド&バターステージMC

田家:有賀さんにありがとうと言っておりましたね。

有賀:恐れ入っちゃいますけど(笑)。

田家:本当にこういうやりとりがあったんですか?

有賀:そうですね。特にブレッド&バターの楽曲は、大体一番最初に僕に持ってきて聴かせるわけです。ここが良くないと指摘すると、それでまた作り直してきたり。大サビがいるんじゃないの? ってアドバイスした曲は、結局僕が作っちゃったりして(笑)。結局プロデュースってどうなっているかというと、アーティストの一番いいところをまず引き出すというのがありますね。でも、それだけじゃなくて、自分の持ってる感性とブレンドしちゃうんです。ブレンドして別のものを作るという感じです。ブレッド&バターは特にそういうのが多くて。つまり、手作りで楽曲として完成させるまでに何回かのやりとりがあって。それで、楽曲が完成すると、山上路夫さんに聴いてもらって、こうしたいんだと伝えて生まれる作品が多かったですね。特にこの海三部作と言われているのは、湘南というカラーにしようと思ったんです。湘南というカラーにすると、恋の歌でも食事してる歌でも全部ブレッド&バターのカラーになる。そういうところを考えて作っていきましたね。

田家:湘南、海というのは一つのプロデュースの柱になっていた。そういうコンセプトが生まれなかったら、アルバムも生まれなかったですしょうし。ブレッド&バターはもう一曲歌われているんですが、いま有賀さんがお話したように、作詞が山上路夫さんです。「MONDAY MORNING」。

Rolling Stone Japan 編集部

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