伊藤美来が語る「攻め」の背景、さらなる広がりを得たポップスの世界

キャラソンを歌うことで作用したこと

─それだけ引き出しも増えたってことなんでしょうね。伊藤さんにとってはキャラソンを歌ってきたことも引き出しになっていると思いますが、そういった経験は今のアーティスト活動にどんな影響を与えていると思いますか?

キャラソンはそのキャラクターを演じながら歌うじゃないですか。今回のアルバムでいうと、「Sweet Bitter Sweet Days」は自分がミュージカル女優になったように、ちょっとお芝居チックに歌う部分も出てくるんですが、そこはキャラソンを経験してきたことがうまく作用しているんじゃないかと思います。

─また、ご自身で作詞をすることも、アーティスト活動の引き出しを増やすことにつながっているのかなと思います。今回のアルバムでは「いつかきっと」と「Good Song」の2曲で作詞を手がけていますが、それぞれどういった想いを綴っているのでしょう?

「いつかきっと」は「PEARL」(2ndアルバム『PopSkip』収録曲)からお世話になっている高田みち子さんに書いていただいた曲なんですが、最近はコロナとかステイホームとかあって、会いたいけど会えない人も多いですよね。私もイベントがなくなってしまったことで、ファンの皆さんとお会いする機会がなくなってしまい、その寂しさとか「今は会えないけど、いつかちゃんと会える日が来ますよ」という希望を歌いたいなと思ったんです。

─歌詞には〈新しい本を買ったんだ〉や〈家にあるものはもう隅まで 読み終えてしまった〉といった、読書好きの伊藤さんらしいフレーズも散りばめられています。

私自身ステイホーム中、本をたくさん読んでいたので、寂しさをそういった情景を使って表せないかなと思って書いたんです。この曲も早く聴いてもらいたいですし、そういう想いが伝わってほしいなと思っています。

─もう1曲の「Good Song」はまたタイプの異なる楽曲です。

「閃きハートビート」(2019年1月発売の5thシングルおよび2ndアルバム『PopSkip』収録曲)からご一緒させていただいている佐藤純一さんに作曲していただいたんですが、すごく明るくて聴いているだけでちょっと元気になるような楽曲だなと思います。実は歌詞を書いたのは、「いつかきっと」より「Good Song」のほうが先だったんですよ。なので、久しぶりの作詞に際して佐藤さんから楽曲のラフと一緒に「この楽曲は『魔女の宅急便』のキキをイメージして書きました。キキはいろんな魔法が使えなくなったりほうきで飛べなくなったり、つらい経験もしながらちょっとずつ成長していき、最終的にはそれでも私は元気ですと言える、そんなストーリーをイメージして書きました」というコメントもいただきまして。そのコメントを私の中で噛み砕きながら、私自身にも照らし合わせて、今後の活動の決意表明というか「私はこうやってずっと成長していきたいです」というテーマを歌えたらいいなと考え、歌詞を書きました。



─1stアルバム『水彩〜aquaveil〜』から毎回アルバムでは作詞に挑戦してきましたが、自分が書く歌詞を客観視できるようになりましたか?

少しずつですけど、なってきたと思います。作詞は「あお信号」という楽曲が最初だったんですけど、そのときは詞が先行で、あとから曲を付けてもらったんです。自分が言いたいことをとにかく言おうみたいな感じで、情景とかも無理やり入れたりしていたんですけど(笑)、今はちょっとずつ時間経過とか背景とかも想像しながら書けるようになってきましたね。でも、ずっと変わらないのは簡単な言葉を使うということ。素朴な言葉を使って、ストレートに書くことをモットーにしているんです。それこそ、マイペースに書くことが多いので、毎回期限ギリギリまで提出できないんですけど(笑)。

─伊藤さんはどういうときに歌詞を書くことが多いですか?

夜ですね。お仕事が終わってお風呂とかも全部済ませて、寝る前に曲を聴きながら「書くぞ! 今から書くんだ!」って気持ちにならないとまったく書けなくて。ノートと携帯のメモを用意して、パソコンで曲を流して楽譜を見ながら書くので、まるでテスト勉強みたいな感じですよ。

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