伊藤美来が語る「攻め」の背景、さらなる広がりを得たポップスの世界

自分のやりたい音楽がわかるようになってきた

─これは今年5月に発売された映像作品『ITO MIKU 5th Live Miku’s Adventures 2019 〜PopSkip Life』を観て感じたことなんですが、アーティスト活動を始めた当初と比べると、最近の伊藤さんは歌に対する向き合い方が変わってきたのかなとか。歌うことに対して、だいぶ意識的になっているという印象を受けたんです。それが今回みたいな「もっと新しいジャンルを歌いたい」という姿勢につながったのかなと、今のお話を聞いて感じました。

やっぱりデビュー当初は本当にわからないことが多くて。そもそも歌うということもこの世界に入るまであんまりなくて、カラオケも友達に誘われたときぐらいしか行かなかったですし、バンドをやっていたというわけでもないので、この世界に入ってから歌い始めて、ソロデビューさせていただいた。それまでもキャラソンは歌ったことがあったけど、ソロデビューに際して「伊藤美来らしく歌ってください」と言われたときに「伊藤美来らしさってなんだろう? 自分らしい歌い方ってなんだろう?」とすごく悩んだんですよ。で、全然うまいことできず、ディレクターさんからの「こうしたらいいよ、ああしたらいいよ」というアドバイスに応えるので精一杯でした。でも、今は“アーティスト伊藤美来”のチーム的にもとても信頼関係を築けてきて、「伊藤さんだったらこれが合うと思うんです」と言ってもらえるようになったし、私も制作陣の皆さんとお話させていただく中でちょっとずつ自分のやりたい音楽がわかるようになって、意見を言えるようになりました。言えるようになったというか、思いつくようになったというのが大きいのかもしれませんね。

─「ライブで盛り上がる曲が欲しい」というのも、そのひとつですものね。

そうですね。「この作家さんで、このメロディラインで」とか詳しいことを言えるわけではないんですけど、自分のイメージを伝えられるようにはなったかなと思います。

─それが成長であり、自信につながっていると思うんですよ。

そうかもしれませんね。以前はいただいた課題をクリアすることに必死だったので、そこに対しては自信を持ってもいいのかなと、今お話していて思いました。

─そのライブで盛り上がるであろう楽曲「Born Fighter」は、最初に聴いたときはびっくりしました。序盤5曲だけでも、ものすごくバラエティ豊かですし。

「Plunderer」から「Born Fighter」への流れがすごく好きで。「Born Fighter」があることによって、その前後にある「Plunderer」と「孤高の光 Lonely dark」が活きるような気がするんです。

─「Plunderer」と「孤高の光 Lonely dark」をアルバムに入れる際には、それに匹敵する強さのある曲がないと浮いてしまいますものね。実際、このような強さが際立つ楽曲を歌う際、どういったことを意識しましたか?

「Born Fighter」は “どこで息すんねん”問題が難しかったんですけど(笑)、気持ちを爆発させて歌う点においては逆に歌いやすかったです。一方で、「Plunderer」とか「孤高の光 Lonely dark」みたいに内なるものをふつふつと燃え上がらせる壮大な楽曲はとても難しいですね。特にこの2曲は『プランダラ』という作品も関係してくるので、その作品を読み込んで気持ちを作って、あまり自分自身が感情的になりすぎずに、ストーリーテラーというか物語を伝えていくことに注力しました。なので、「こういう歌い方かな?」とディレクターさんとも話し合いながら歌いましたね。

─そういう相談をする内容も、以前と比べて変化があるんでしょうか?

そうですね。デビュー当初はアドバイスを聞いてそれをメモして、「ここは気をつけなきゃ」みたいな感じの受け取り方だったんですけど、今は「こういう歌い方をしてみたんですけど、どうですか?」とか「ここのフレーズは可愛いほうがよくないですか?」とか細かいところまで自分から提案できるようになりましたね。


Photo by Kentaro Kambe

【写真ギャラリー】伊藤美来の素顔に迫る(画像5点)

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