氷室京介が自己表現を確立するまで 当時のディレクターが回想



田家:この曲を選ばれた理由は?

子安:このアルバムと言えば、さっきから出ている「ANGEL」と「DEAR ALGERNON」が両巨頭のタイプの異なる作品で。それ以外にもソロでライブをやるにふさわしい曲が何曲かある中で、個人的にはこの「STARANGER」が、決して派手ではないけど氷室さんのメッセージが明確であり、自分の中での隠れた名曲ということで選ばさせていただきました。

田家:BOØWY時代には「DREAMIN’」を歌う前に、夢を見てる奴らに送るぜとステージで言われていて。ファンの方から、俺は夢を見れないダメなやつなんです、という手紙をもらって、そうじゃないんだということで作った曲ですよね。精神的には、この「STARANGER」が、一つのバックボーンでもある気がしますね。このアルバムはダニエル・キイスの小説『アルジャーノンに花束を』が題材になっていますが、こういう明確なテーマがあるアルバムというのは子安さんの中でどんなふうに思いましたか?

子安:本人の中から「DEAR ALGERNON」があり、アルバムタイトルの『FLOWERS for ALGERNON』という提示があって。すごく氷室さんらしいというのを感じました。ソロでやっていくんだということのメッセージを明確にアルバムに表現したいということだと思いますね。

田家:バンドじゃなくてソロだぞという意志の表れでしょうね。このアルバムはレコード大賞の最優秀アルバム賞を受賞して、氷室さんはその舞台で「ポピュラリティのあるロックアルバムを作りたかったので嬉しい」と発言されていました。

子安:直接関係ないかもしれませんが、当日、武道館に僕も行って、その年に出ていたのは光GENJIさんで、氷室さんと光GENJIが一緒に立っていることに凄さを感じました。



田家:2枚目のアルバム『NEO FASCIO』が1989年9月に発売になるわけですが、そのアルバムから1989年7月にまずシングル『SUMMER GAME 』、そして9月に2枚目『MISTY〜微妙に〜』をリリースされました。

子安:自分の中ではまず『SUMMER GAME』のデモテープが上がってきた時のインパクトがあって。マネージャーの土屋さんが、うちの会社にニコニコしながら来まして。「子安さん、絶対気に入ってもらえると思うんだけど、新曲できた」と言って聴かせてくれたのがこの曲で。『FLOWERS for ALGERNON』があって、その次にどういう札が出てくるのかという時に、この『SUMMER GAME』は一生残る作品だろうなという印象がありました。実際評判も良くて、自分の中ではアルバム一枚をシングル一枚だけで表現するのではなく、海外のように何曲か出して伝えていきたいなと思って。良いタイミングで『MISTY~微妙に〜』もCMタイアップに決まり、ちょっと違う毛色の曲になって、『SUMMER GAME』とも良い対比になってアルバムもいけるんだなと思いました。

田家:『SUMMER GAME』が出た時には『NEO FASCIO』はもう動き出していたと。『NEO FASCIO』というアルバムを考えると、この「MISTY~微妙に〜」は違う意味を持っているのではないでしょうか。お聴きください。

Rolling Stone Japan 編集部

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