日本のポップミュージックそのものが松田聖子なのではないか? 1990〜テン年代の10曲



1996年4月に発売になりました『あなたに逢いたくて ~Missing You~』。作詞が彼女で、作曲が彼女と小倉良さんの共作ですね。1980年のデビューからずっと所属していたソニーからユニバーサルに移籍した第一弾。この曲の入ったアルバムも移籍第一弾『Vanity Fair』でしたね。1988年の『旅立ちはフリージア』、これがソニー時代の最後のシングルチャート1位だったんですが、『あなたに逢いたくて ~Missing You~』で8年ぶりに一位に復帰しているんですね。『旅立ちはフリージア』は、聖子さんの作詞、作曲はゴダイゴのタケカワユキヒデさんだったんですが、このシングルでは聖子さんが作曲にも加わって一位になっているわけです。しかも、『あなたに逢いたくて ~Missing You~』はミリオンセラーで彼女のキャリアの中で一番売れているシングルになった。それまでの15年間であれだけヒット曲がありながら、ここにきて一番売れた実績を残している。歴史を塗り替えながら生きてきた人。今週はこの曲からです。1996年4月発売、40枚目のシングル『あなたに逢いたくて ~Missing You~』でした。



1997年4月発売のシングル『私だけの天使 ~Angel~』。作詞が彼女で、作曲も彼女と小倉良さんの共作。編曲は鳥山雄司さんですね。この頃のアレンジは鳥山雄司さんが多いです。1980年代の大村雅朗さんの後を受け継いだというような存在ですね。この曲の説明は不要だと思うんですが、娘さんへの気持ちを歌ったものです。アルバムは1997年5月に出た『My Story』、"私の話"ですよ。自分を曝け出したと言っていいでしょうね、この曲の歌詞にあるシングルマザーの心境、「あなたがいるからママはこうやって毎日仕事をやっていけるの あなたが生きがいなの」。これはやっぱり、そういう環境の中でお仕事されている女性誰もが持っている、お子さんに対しての気持ちじゃないでしょうか。彼女は、アイドルというところから、ママドルという風に呼ばれるわけですが、結婚しても離婚しても、再婚しても歌に生きるという彼女の生き方はずっと変わってないことになりますね。こういう音楽に対しての関わり方をしてきた女性というのは、少なくとも1970年代のアイドルにはいなかったでしょうね。1980年代にもいなかったでしょう。

1970年代のアイドルで代表的なのが山口百恵さん、キャンディーズもそうですが、音楽を離れて自分の人生を選ぶ、家庭に入るということが美談のように語られた時代。家庭もそれに付随させてきたというと語弊はありますが、聖子さんはそれを超えて自分はずっと音楽をやっていくんだ、歌に生きる人間なんだっていうことを音楽の中に歌い込んできた。この曲はそういう例だったと思いますね。去年の5月の特集が西城秀樹さんだったんです。その時にも思ったんですが、この頃のアイドルと呼ばれた人たちのことを、僕も含めた音楽ジャーナリズムはちゃんと捉えてきただろうか? という反省を先週も言いましたが、今週は特にそう思いながら次の曲ですね。1997年12月に発売になった「Gone with the rain」。

Rolling Stone Japan 編集部

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