日本のポップミュージックそのものが松田聖子なのではないか? 1990〜テン年代の10曲



1997年12月に発売になった46枚目のシングル『Gone with the rain』ですね。初めてのマキシシングルで、作詞が本人で作曲が本人と小倉良さん。アレンジが鳥山雄司さんですね。これかっこいいな、いい曲だなあって思っていたんです。この頃はシングルチャート1位にはもうならないですね。そういうタイプの曲じゃなくなってることもあるんでしょうし、彼女の中に日本のシングルチャートの1位はもういいやっていう感じがあったんじゃないでしょうかね。1980年代から1990年代にかけて、あれだけずっと1位を取り続けて、それを記録として続けることにもう意味は感じられなかったっていうのが、この1990年代の聖子さんだったように思います。先週の最後は、1988年のアルバム『Citron』の「林檎酒の日々」で終わったわけですが、今週は1996年にきています。1990年代が抜けてますよって思われているファンの方も多いと思いますが、1990年代は本当にいろいろな冒険をしていますね。松本さんから一人立ちした時期です。1989年スペインの画家ゴヤの生涯を歌ったミュージカル仕立てのアルバム、これをメインキャストに世界三大テノールのプラシド・ドミンゴと一緒に作っているんですね。その後に1989年のアルバム『Precious Moment』の作詞もしている。で、1993年から1995年に出ているアルバム4枚では作詞も作曲も手掛けているわけです。アイドルがシンガー・ソングーライターになり、プロデューサーにもなり、海外にも進出し、1990年代は、日本のアイドルはもちろん女性歌手が誰もやってこなかったことを全力でやり続けた。走り続けた10年間だったんだなあと思ったりしました。そうやって過ごしてきた1990年代を締め括ったのが、1999年のこの曲でもあります。「櫻の園」。



1999年12月発売になったアルバム『永遠の少女』から、「櫻の園」ですね。作詞が松本隆さんで、作曲が大村雅朗さん。これはもう永遠の松田聖子、不変の松田聖子と言っていいでしょうね。この上品さ、そして優しさ、センチメンタルで温かい、泥臭くない。洋楽的なバラードで、歌謡曲的なあざとさがない。これはもう他の女性には無いスタイル、これをやれば松田聖子になるんだ、何年の歌でも松田聖子になるという一曲でしょうね。これもアルバム曲でシングルにはなっていませんね。このアルバム『永遠の少女』で、松本隆さんとは11年ぶりにタッグを組んだ。1988年の『Citron』以来ですね。アルバム10曲中、8曲は松本さんが作詞。いろいろな出会いや別れを経験した大人の愛のアルバムでした。男性にとっては少年だった時、青春だった時は、なかなか青春って歌にしにくいものですが、女性にとっては少女というのがそういう時代なんでしょうね。このアルバムのタイトルは『永遠の少女』ですね。少し背伸びをした生き方をしてきた1980年代、それからもっと大胆になろうとした1990年代があって、永遠の少女という風に歌えるようになった。そういう2000年の始まりになった曲です。2000年5月に出たシングル『20th Party』。

Rolling Stone Japan 編集部

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