ビリー・アイリッシュを発掘した敏腕起業家の素顔

相手からノーと言われる回数も半端じゃない

ー今まで直面した中で、一番大きなハードルは何でしたか?

対抗意識のせいで不安に感じるということは多々ある。大勢の人々が自分の仕事に縄張り意識を持っていて、他人に足を踏み入れてほしくないと思っている。たくさんのことができて、どこにいっても通用する人間がいると、お前は引っ込んでろと言われるんだ。でも、僕よりクライアントのことを大事にしている人は他にいないんだから、もし自分が役に立てることがあるなら――Spotifyと組むとか、映画の挿入歌に採用してもらうとか、国際マーケットと連絡を取るとか――僕はやるよ。

僕が手順を飛ばすのをよく思わない人は常にいる。これまでにも、僕が領分を越えたとか、相手を踏み台にしたと感じた人からさんざん嫌味を言われた。音楽業界の新参者にとってそういう嫌味は本当にヘコむし、自分がどんなヘマをしたんだろうという気分になる。ジョン・ジャニックのおかげで、そういう状況をいくつも切り抜けてこられた――ここは領分を越えたな、とか、攻めすぎたな、というのがわかるようになった。ここはプッシュしよう、自分の仕事をしよう、今はクライアントを第一に考えよう、とかね。導いてくれる素晴らしい恩師がいなかったら、しょっちゅうトラブルに見舞われていただろうね。

相手からノーと言われる回数も半端じゃない。アーティスト発掘の大部分は、プレゼンして、相手を説得して、自分が推すアーティストと彼らの楽曲に関心を向けてもらうことだ。僕が今まで何度ノーと言われたか、想像もつかないと思うよ――ミーティングを断られた回数、時間を割いてくれなかった人の人数。信じられないぐらい落ち込むこともある。そのうち、自分の視点がズレてるんじゃないかとか、持っていく先を間違えたんじゃないかと考えるようになる。そういう考えを払拭して、自分を信じ続けることができないと、向こうに足元をすくわれてしまうんだ。僕はそういうネガティブなエネルギーをポジティブに変えるようにしていた。やる気に変えたんだよ。

昔は、この世で一番好きなことはノーと言われることだった。だって、相手が間違っていると証明したくなるだろう。常に僕が正しいわけじゃない。間違った決断を下したこともある。僕にノーと言った人が全員間違っていたわけでもない。でもハングリーだったころの僕は、ノーを糧にする必要があったんだ。

Translated by Akiko Kato

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