劇伴作家でありアーティスト、澤野弘之が語る創作の裏側

「ASKAさんや小室さんからの影響に向き合う」

―上海には、苦手な飛行機に乗って向かったそうですね。

(笑)。でも、行って本当によかったです。実際に現地で、国や言語が違っても純粋に音楽を愛して、楽しんでくれているお客さんの顔を目にして、素直に感謝の気持ちしかなかったですね。あと、この曲をつくった時点では、SawanoHiroyuki[nZk]はずっとボーカルを固定してやっていくプロジェクトになるのかな、と思っていたところがあったのですが、当時のレーベル担当の方から「次はこういう方はいかがですか?」という提案があって。もちろん、mizukiさんにはmizukiさん自身の活動もあるので当然なんですが、そのときはじめて、自分の中でSawanoHiroyuki[nZk]が「楽曲によっていろんな方とコラボレーションしていく」という方向性になっていって。ですから、やりながら「こんな可能性もあるんだな」と気づいていったような感覚でした。

―SawanoHiroyuki[nZk]は劇伴作家ではなく、アーティストとしてのプロジェクトだと思うので、ライブでの体験もそれ以前とは変化した部分があったんじゃないでしょうか?

それはありました。劇伴作家とは違って、アーティストとしての活動をするという部分で、それまでとは違う意識が、楽曲にもライブにも反映されていったと思います。ライブでお客さんとどうやって一体感をつくっていくかについても、このプロジェクトを通してより考えるようになったというか。これは、参加してくれるボーカリストの方々がライブでお客さんと向き合う姿を、すぐそばで観たことも大きかったです。プロジェクトを進める中で、ボーカルの人たちとのかかわりの中で気づいていくことはとても多かったと思います。

―ライブに関してだと、澤野さんは一般的な劇伴作家の方々のようにコンサート・ホールでライブをするだけではなく、バンドのようにスタンディングの会場でライブをすることも多い印象があります。これは最初から考えていたことだったんですか?

最初の頃は、劇伴作家と言えば「ホールでオーケストラやアンサンブルを従えてライブをする」というイメージがあって、僕自身もそんなふうに活動しようと思っていました。でも、活動を続ける中で、どうしても僕のもうひとつのルーツである、ASKAさんや小室さんからの影響に向き合うことになって。その結果、座って聴いてもらうよりも、自分の場合は、お客さんと一緒になってガッと盛り上がれる方が嬉しいと思うようになりました。

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