劇伴作家でありアーティスト、澤野弘之が語る創作の裏側

「人との繋がり」がモチベーション

―今回のDISC2にも収録されている、澤野さんのライブでも恒例のボーカリストの方々が集結した「REMEMBER」は、まさにそういったライブから生まれた楽曲ですね。

そうですね。この曲は、いろんなボーカリストの方に入れ替わり立ち替わりステージに出てきてもらう構成でライブをする中で、「みんなで一緒に歌える曲がほしい」と思ってできた曲です。僕がそう考えていたところ、YoshさんやGemieさんと対談をしたときに、彼らが「みんなで歌える曲があってもいいですよね」と言ってくれて、「あ、やってもいいんだ」と思ったんですよ(笑)。まさに、ライブやボーカリストの方々とのかかわりの中で生まれた曲でした。

他にDISC2では、同じくYoshさんが参加してくれた、アルバムの中では唯一の新曲になっている「BELONG」も特に気に入っている楽曲です。この曲は『Fate/strange Fake』のCMソングになりましたが、実はもともとは、べストアルバムの企画が立ち上がったときに、15周年のひとつのテーマ曲のようになればいいな、と思ってYoshさんと相談しながら進めていた曲でもあるんです。



―曲自体の構想は、『Fate/strange Fake』のCM曲になる前からあったということですね。

そうなんです。そのお話が来たときに、ちょうどこの曲が合うと思ったので、CMソングとしてつかってもらいました。でも、最初につくりはじめたときは、「15周年にライブをやりたい」と思っていたので、そこでお客さんと一体感が感じられるような曲にしたいと思っていて。この曲では、サーティ・セカンド・トゥ・マーズの『This Is War』(2009年)で多用されていたような、シンガロングするようなコーラスを入れることで、「みんなで合唱できたらいいな」と思っていました。それから、これは言おうかどうか迷ったんですけど、この曲は山内“masshoi”優くんに叩いてもらった、[nZk]最後の曲になりました。つくっているときは、これからも [nZk]にかかわってほしい、と思っていたんですが、結果的には最後の曲になってしまって。でも、だからこそ彼に背中を押してもらうような気持ちで、「今後も活動しなければいけないな」と、あらためて思うような曲にもなりました。そういう意味でも、僕にとって大切な楽曲です。

―お話を聞いていても感じることなのですが、澤野さんの場合は、楽曲にゲスト参加するボーカリストも多岐にわたっていますし、劇伴作家として作品に寄り添っていくことも含めて、「人と一緒に何かを形にする」ことに興味を惹かれているような印象を受けます。

ああ、それは確かにそうだと思います。今はひとりで音楽をつくろうと思えば、それができる時代です。でも、僕はレコーディングでもライブでも、人と一緒にやるからこそ曲への思い入れが強くなる感覚があって。僕の音楽を聴いてくれたり、ライブに来てくれたりすることもそうで、自分の場合はその「人との繋がり」が、活動するうえでの重要なモチベーションになっているんです。僕は普段から、自分でつくった曲を聴き返すことも多いんですけど、それもきっと、曲にかかわってくれた人たちが入れてくれた要素が重要で、自分だけで完結していたらそうはならなかったかもしれないな、と思うからですね。『プロメア』でメインテーマをつくったときに監督が喜んでくれて、それによって映像に色々な形で当てはめてくれたりすることもそうですけど、人を介して楽曲に新たな魅力が加わっていくのは、自分にとっても大切な瞬間になっています。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE