劇伴作家でありアーティスト、澤野弘之が語る創作の裏側

澤野弘之(Courtesy of SACRA MUSIC)

2005年に作家活動をスタートさせて以降、『医龍-Team Medical Dragon-』を筆頭にしたTVドラマから、『機動戦士ガンダムUC』『進撃の巨人』『ギルティクラウン』などのアニメまで、数多くの作品で劇伴を手掛けてきた人気作家・澤野弘之。

彼が作家活動15周年を記念して、キャリア2枚目となるボーカル楽曲ベスト・アルバム『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』を完成させた。

この作品は、DISC1に劇伴作家・澤野弘之名義で手掛けたボーカル入りの劇伴楽曲やアーティストへの提供曲を、Disc2に2014年以降スタートさせたアーティスト名義のプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)の楽曲を収録。また、初回生産盤にはCD初収録の楽曲やBillboard Live Tokyoでのライブ映像なども追加され、近年の彼の活動の集大成とも言える内容になっている。劇伴作家/アーティストとして歩んできた15年間について、澤野弘之に聞いた。

―『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』は、澤野さんの作家活動15周年を記念した作品になっていると思います。まずは作家として本格的にデビューした2005年当時、どんなことを考えながら活動していたかを思い出してもらえると嬉しいです。

当時はまだ、つねに仕事があるわけではなかったですし、ひとつ仕事をしたら「果たして次はあるのかな?」という状態で。でも一方で、「劇伴作家を10年ぐらい続けたら、その後は安泰だったりするのかな?」と勝手に安易に考えたりもしていて……(笑)。とにかく、目の前の仕事に必死だったと思います。幸せなことにデビュー直後から順調にオファーをいただけてはいたので、そのことをありがたく感じつつも、同時に「劇伴作家としてやっていけるのか?」という不安も感じているという、何とも言えない感覚でいましたね。

―当時の澤野さんが、特に影響を受けていた人たちと言いますと?

やっぱり、僕がそもそも劇伴作家に興味を持つきっかけになった坂本龍一さんや久石譲さん。その後知った菅野よう子さん。それから、海外だとハンス・ジマーやダニー・エルフマンの影響は大きかったです。僕が劇伴の魅力に気づいた作品は、高校のときに観た『もののけ姫』なんですけど、アシタカが故郷の村を離れて旅立つ場面で、久石譲さんが手掛けた「もののけ姫」のオーケストラアレンジが壮大な映像と一緒に流れるのを観て、「映画音楽ってすごいな……」と感動してしまって。そこから様々な方に影響を受けて、劇伴の幅広さを自分なりに吸収していきました。その経験が、劇伴作家として仕事をはじめたときにも、大きな糧になったと思います。劇伴って、「どんなシーンで流れるか」によって、その音楽の印象も大きく変わりますよね。たとえば、サントラを買ってくれる方にとっては、そのインスト曲が流れるシーンや映像作品自体が、歌詞の代わりのように影響しますし、だからこそ、作品との兼ね合いの中で、音楽自体の世界観を広げてもらえると思っていて。音楽と映像とのマッチングによって人に伝わる感動は、音楽単体のものとも、映像単体のものとも違うというところに、すごく感動したのを覚えています。

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