「セックス・ドラッグ・R&R」は過去のもの 音楽業界が取り組むメンタルヘルスケア

Photographs in Illustration by GL Askew II; Amy Sussman/Invision/AP; Getty Images



業界団体やレコード会社もヘルスケアの動きに追随

業界団体や著作権管理団体もこの動きに賛同している。Association for Electronic Musicは昨年10月に、エレクトロニックミュージックの世界に生きる人々のためのメンタルヘルスガイドを発表した。同ガイドでは鬱や虚脱感、インポスター症候群等の兆候を見極める方法や、長いツアーに出ることが多いマネージャーやアーティストが知っておくべき対処法などが詳しく紹介されている。

昨年12月には、心身の健康がキャリアを大きく左右していると答えた人が、ミュージシャンは一般の人々よりも31パーセント多かったとする研究結果を受け、American Society of Composers, Authors and Publishers (ASCAP)はTuneUpというウェルネスプログラムを発表した。ASCAPは今後いくつかの都市とオンラインで回復支援団体をローンチするとともに、72万5000人の会員が割安でフィットネス・栄養・マインドフルネスに関するサポートを受けられるようにするという(2020年にニューヨークで行われるグループメディテーションがその第一弾となる)。

レコード会社の間では、現時点で少なくとも1社が既に行動を起こしている。昨年2月、トロントに拠点をおくインディーレーベルRoyal Mountain Recordsは、メンタルヘルス関連のサポートを受けるための補助金として、全契約アーティストに1500ドルを支払うと発表した。Borer曰く、マネージャーやレーベルの重役たちから所属アーティストの支援策についての問い合わせは急増しているものの、メジャーレーベルではそういった動きがまだ少ないという。「アーティストがオーバードーズ等で命を落とすたびに、増える一方の鬱や不安の症状が引き起こす問題は、音楽業界のビジネスにとって脅威へとなっていきます」。ボアーはそう話す。「彼らが医療面でのサポートに投資する気があるかどうかに、その未来がかかっているんです」

アーティストたちもまた、精神疾患という汚名を返上しようとする動きを見せている。具体的なケースは多数存在するが、2019年だけでもゴッドスマックのサリー・エルナがメンタルヘルスについての教育を促す非営利団体Scars Foundationを設立し、ジャムバンド会のベテランWidespread Panicが宝くじ形式の募金で集めた10万ドルを自殺防止団体Nuci’s Spaceに寄付したほか、ビリー・アイリッシュは公共広告で自身の鬱の経験について語った上で、助けを必要としている人々に名乗り出るよう呼びかけた。

興行の面では、いくつかのフェスティバルがメンタルヘルスについての意識向上に取り組んでいる。5月9日にはロサンゼルスで、ライマンがチェスター・ベニントンの未亡人タリンダ・ベニントンと共同でプロデュースする320 Festが開催される(大手プロモーターのAEGとWarner Recordsが協賛)。同フェスティバルではミュージシャンやコメディアンたち(出演者は今後発表予定)による無料パフォーマンスや、ベニントンによるメンタルヘルスと依存症についてのスピーチを含む様々なパネルディスカッションが行われるほか、同イベントのフィナーレを飾るマイクロソフト・シアターでの慈善コンサートも予定されている。出演者は現時点で1組も発表されていないが、ラインナップは「最高クラス」になるとライマンは話している。「楽しんでもらうことで、人々に学ぶ意欲を持ってもらえればと考えています」

Translated by Masaaki Yoshida

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