「セックス・ドラッグ・R&R」は過去のもの 音楽業界が取り組むメンタルヘルスケア

Photographs in Illustration by GL Askew II; Amy Sussman/Invision/AP; Getty Images



「生き急ぎ、若くして死ぬ」というクリシェは過去のものとなっていく

オズボーンはというと、湧き上がる負の感情を抑えるための努力を続けている。彼の人生が崩壊しかけていた約10年前、ドクター・ジョンとアイヴァン・ネヴィルを含むミュージシャン仲間たち数名はMusiCareと協力し、彼がカリフォルニアにあるリハビリセンターに入所できるよう手配した。「俺の人生の新たな1ページはあの時から始まった」。そう話すオズボーンは後に自宅を取り戻し、妻と復縁し、キャリアも再び波に乗り始めたという(彼は2019年にニューアルバム『Buddha & the Blues』を発表している)。今月で彼が依存症を克服してから11年になる。

オズボーンは自身が経験した幸運をきっかけに、2017年に非営利団体Send Me a Friendを設立した。依存症の克服に努めているアーティストをツアー先で支える「Friend」を派遣する同団体は、50州で3500人のボランティアを擁するネットワークを誇り、発足以来100人以上のミュージシャンを支えてきた(「Friends」も元依存症患者であり、最低でも1年以上クリーンであることが参加の条件となっている)。

オズボーンがSMAFの設立を思い立ったのは、依存症を克服して再び働き始めた直後のことだった。「どん底から這い上がってきて、ようやくステージに立てるぐらい頭が冴え渡ってきたってのに、周囲の人間が酒やドラッグに溺れていたんだ」。彼はそう話す。同団体のプログラムは、ツアーに出るアーティストたち(あるいはクルーやマネージャーを含むあらゆる業界人)に手を差し伸べる。「友だちが寄り添ってくれる数時間の間、彼らは気を休め、自信を深めることができる」。オズボーンはそう話す。

自分が苦しんでいた頃にSMAFのような団体が存在していれば、より早く助けを求めていたはずだと彼は話す。「ビクビクしなきゃいけなかったり、近づきがたい雰囲気じゃなくて、(精神疾患や依存症患者に)きちんと理解を示してくれる人々がいたら、状況は違っていたはずなんだ」

オズボーンのような人々の努力により、かつて多くのアーティストたちが取り憑かれた「生き急ぎ、若くして死ぬ」というクリシェは過去のものとなっていくはずだ。「レイン・ステイリー、スコット・ウェイランド、クリス・コーネル…私たちは多くの才能を失いました」。1990年代前半に開催されたロラパルーザでステージマネージャーとして、アリス・イン・チェインズ、ストーン・テンプル・パイロッツ、サウンドガーデンを舞台裏で支えたライマンはそう話す。「私たちの世代を代表するバンドの多くが辿った運命は、決して繰り返されてはならないのです」

Translated by Masaaki Yoshida

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