「セックス・ドラッグ・R&R」は過去のもの 音楽業界が取り組むメンタルヘルスケア

Photographs in Illustration by GL Askew II; Amy Sussman/Invision/AP; Getty Images



過去数年間でも多くの悲劇が

過去数年間で、そういった問題は数多くの悲劇を生んでしまった。2019年だけでも、シルヴァー・ジュースのデヴィッド・バーマン、ギタリストのニール・カサール、マウンテン・ストリング・バンドの発起人ジェフ・オースティン、そしてプロディジーのシンガーだったキース・フリント等が自ら命を絶ってしまった。過去2年の間には、ラッパーのマック・ミラーがドラッグのオーバードーズによる不慮の死を遂げたほか、スーパースターDJのアヴィーチー、サウンドガーデンのクリス・コーネル、リンキン・パークのチェスター・ベニントン等が自ら死を選んでしまった。


左からクリス・コーネル、デヴィッド・バーマン、ニール・カサール(Photo by Casey Curry/Invision/AP/Shutterstock; Brent Stewart; Jack Vartoogian/Getty Images)

メンタルヘルスの問題がかつてなく深刻化している現在、音楽業界ではまったく新しい取り組みが見られ始めている。大企業や草の根的組織が様々な団体を発足させ、フェスティバルのオーガナイザーたちはメンタルヘルスの問題に対する意識の向上を訴え、レコード会社やとアーティストたちは精神疾患という負のイメージを返上しようと努めている。最近ではブルース・スプリングスティーン、ジャスティン・ビーバー、リゾ、デミ・ロヴァート等が、自身の抱えるメンタルヘルスの問題について積極的に語っている。

そういったアーティストたちを支えようという動き自体は、何十年も前から存在していた。Recording Academyは1989年に、アーティストたちの健康面と経済面のサポートを提供するMusiCaresをローンチしたが、近年ではその需要が飛躍的に増加している。「数多くのアーティストを失ったことで、(業界のリーダーたちは)ようやく事態の深刻さに気づきました」。ライマンはそう話す。「これ以上アーティストたちを死なせてはならない、そう考え始めたのです」

ヒラリー・グリーソンは、昨年6月に逝去したオースティン、そしてその2カ月後にこの世を去ったカサールの友人だった。「2人ともキャリアは順調そのもので、頻繁に大舞台に立っていました」。彼女はそう話す。「死の影はひっそりと忍び寄っていたのです」。グリーソンはアーティストと非営利団体を引き合わせるコンサルティング会社、LevelのCEOを務めている。カサールがこの世を去った翌日、彼女の携帯は打ちひしがれた友人たちやクライアントからの電話で鳴りっぱなしだったという。「何かが狂っている、彼らは皆そう口にしていました」。彼女はそう話す。「自分たちにできることはないか、私たちはそう考えるようになりました」

彼女が出した答え、それは「音楽業界におけるメンタルヘルス問題対策委員会」と銘打ったカンファレンスを開催することだった。そのメンバーにはプロモーターのピーター・シャピロをはじめとする40人以上の音楽業界のエキスパートたちのほか、ミュージシャンやマネージャー、裏方のクルーらが含まれていた。「カンファレンスの目的は、現在どういった団体が存在するのかを把握した上で、どういった支援が不足しているのかを特定し、自分たちにできることを見極めることでした」。グリーソンはそう話す。「この業界に生きる私たち全員が、音楽こそが人生を豊かにしてくれるということ、そしてこの世界が極めてタフであるということを理解しています」

Translated by Masaaki Yoshida

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