「セックス・ドラッグ・R&R」は過去のもの 音楽業界が取り組むメンタルヘルスケア

Photographs in Illustration by GL Askew II; Amy Sussman/Invision/AP; Getty Images



「ブッキングオファーのメールが延々と送られてきて、気が休まる時間がまるでない」

そのカンファレンスから生まれたBacklineという組織は、メンタルヘルスの問題を抱えるミュージシャンとその周辺にいる人々(ローディー、サウンドエンジニア、エージェント、そして家族など)に、必要なサポートを提供する団体を紹介することを目的としている(ニューマンは同団体の医療アドバイスチームの一員だ)。10月初旬にグリーソンがその発足をアナウンスすると、同月だけで70件の相談が寄せられた。「エージェントやマネージャーたちは、こんな風に話していました。『バンドのブッキングオファーのメールが延々と送られてきて、気が休まる時間がまるでない。喜ぶべき事態のはずなのに、耐え難いプレッシャーを感じている』」。彼女はそう話す。

Backlineは、MusiCaresやSweetRelief Musicians Fund(1993年に設立され、アーティストたちに生活補助金を支給している)、HAAM(過去15年間にわたって、オースティンを拠点とするミュージシャンたちがリーズナブルな金額で治療を受けられるよう支援している)といった既存のメンタルヘルス支援団体に関する情報センターのような役割を果たしている。「こういった団体の情報をまとめる組織は、これまで存在していませんでした」。Backlineの医療部門のディレクターであり、れっきとしたセラピストでありながらミュージシャンでもあるザック・ボアーはそう話す。「私たちは既存の各団体の情報を発信することで、どういった支援が受けられるのかを伝えようとしています」

Backlineのケースマネージャーたちは、ウェブサイトに寄せられる相談にマンツーマンで応じ、セラピストやライフコーチ、支援団体、アルコール依存患者たちの会など、それぞれに適した人材や団体を紹介している。Backlineのサービス利用は無料だ。「メンタルヘルスの問題をめぐる状況は変わりつつあります」。ボアーはそう話す。「セックス・ドラッグ・ロックンロールという価値観はもはや過去のものです。今求められるのは、そういったライフスタイルがもたらす長期的な影響を明らかにすることです」


ヒラリー・グリーソン(Photo by John-Ryan Lockman/Showlove Media)

去年の秋にはBackline以外にも、音楽に特化した団体がいくつか誕生している。Live Nationは世界メンタルヘルス・デーの10月10日に、ツアーに出るアーティストとそのクルーやスタッフを対象とした、24時間電話またはオンラインでセラピストの診断を受けられるサービスを提供する非営利団体、Tour Supportを支援する旨を正式に発表した(クリス・コーネルの未亡人であるVicky Cornell、ジョン・レジェンドやマイ・モーニング・ジャケット等のアーティストたちも、同団体への協力を申し出ている)。またLive Nationは最近、Music Industry Therapist Collectiveが発表した業界におけるメンタルヘルス改善ガイドの出版に出資した。「ツアーに出るアーティストの数がかつてなく多くなっている現在、長いツアーに出るアーティストやクルー、スタッフたちが抱える問題に目を向けることは不可欠になっています」。Live NationのCEO、マイケル・ラピノはそう話している。「業界のキープレイヤーたちがこういった問題に取り組み始めたことは、とても大きな進歩です」

Translated by Masaaki Yoshida

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