「セックス・ドラッグ・R&R」は過去のもの 音楽業界が取り組むメンタルヘルスケア

Photographs in Illustration by GL Askew II; Amy Sussman/Invision/AP; Getty Images



「有効な解決策を見つけるには、実験に基づくアプローチが不可欠」

一方ニューヨークでは、昨年ブルックリンで初開催されたメンタルヘルスのための慈善コンサートSound Mindの企画が進行中であり、パッション・ピットとエイミー・マンの出演が検討されているという。またナッシュビルでは、精神疾患と依存症への意識向上を目的としたイベント、Recovery Festの開催が今年の秋に予定されている。「メンタルヘルスについての議論は、いくら重ねても十分ではありません」。グリーソンはそう話す。「透明性が向上すれば、サポートを必要としている人々がもっと名乗り出るはずです。そういった動きが今求められているのです」

こういった業界におけるメンタルヘルスの問題への取り組みが見られる一方で、臨床心理学者のニューマンはそれらがまだまだ不十分だと指摘する。「こういった取り組みは確かに有効です。あるプログラムが1人の人物の自殺を未然に防いだとすれば、それは紛れもない成功です」。彼はそう話す。「しかしこういったケースにおける一番の問題点は、手っ取り早い応急処置で対処してしまいがちなところです。本当に必要なのは、より根本的な解決策なのです」


ワープド・ツアー創始者のケヴィン・ライマン(Photo by Tim Mosenfelder/Getty Images)

ニューマンは今後数週間のうちに、コンサート業界におけるメンタルヘルスに特化した初の研究機関、TourHealth.Orgのローンチを予定している。その目的はアーティストやクルーが経験するメンタルヘルスの問題についてのデータを収集し(世界中に散らばる約1万人の業界人にアンケートが送付される)、それらに基づいた科学的研究によって抜本的な防止策を考案することだ。「本当に有効な解決策を見つけるには、実験に基づくアプローチが不可欠です」。ニューマンはそう話す。「まず突発的に発生する主な問題の根本的原因を特定し、その後実験によって解決策を考案したいと考えています。人々が有効なケアを受けられるようになれば、業界には大きな変化が生まれるはずです」

またニューマンは、Live Nationのような大手企業が業界におけるメンタルヘルスの問題解決への動きを先導してくれることを願っている(ツアー行程により多くの休養日が挟まれることや、アーティストやクルーのメンタルヘルスのケアに各会場やフェスティバル側がより関心を払ってくれることを望んでいるという)。「私たちは問題点について理解し始めたばかりです」彼はそう話す。「今後押し寄せてくる波をせき止めるための手がかりをようやく見つけた、そういう状況なのです」

Translated by Masaaki Yoshida

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