ハリー・スタイルズ密着取材「心の旅で見つけたもの」

ハリー・スタイルズ(Photograph by Ryan McGinley for Rolling Stone)



「フェミニズムが掲げる理想は、ずっと分かりやすいものだと思う」

彼にはつねに熱狂的な女性ファンがいる。そして彼は一度もそれを嫌がるふりをする必要性を感じなかった。「ファンは一番正直だよ――10代のコたちは特にそうだし、それより年上の人たちもね」とハリー。「みんな嘘発見装置みたいなのを持ってるんだ。誰だって、誠実な人にファンになってもらいたいだろ。『あの子たちは子供だから、自分でも何を言ってるのかわかってないんだろう』なんていう、くだらない戯言をいう時代はもう終わり。彼らは自分たちの意見をちゃんと持っていて、真剣に相手の話を聞く。ファンがこの世を支配している。ファンが全てを仕切っているんだ」

彼には性にまつわる政治観を持っていることやフェミニストを自称することに関し、一部の人々が抱えるような神経質なところがない。「結局のところ、フェミニズムっていうのは男性と女性が平等だと考えることだろう。違うかい? 『自分はフェミニストです』って言うと、男性は地獄で焼かれるべきだとか、女性は男どもの首を踏みにじるべきだとか考えているように思われる。そうじゃない。女性は平等であるべきだという考えなんだ。ちっともおかしなことじゃないと思う。僕は母や姉と一緒に育ってきた――女性に囲まれて育つと、女性的な一面がより大きくなる。もちろん、男性と女性は平等であるべきだよ。ただ僕は、フェミニストであるからといって大絶賛されたいわけじゃない。もっとシンプルなんだ。フェミニズムが掲げる理想は、ずっと分かりやすいものだと思う」

彼のオーディエンスは激しいことでも有名だ。そうなるのも無理はない。去年の夏マディソン・スクエア・ガーデンで行われたコンサートでは、「キウイ」の最中にフロアが大きく揺れた――1980年代以来あそこで何度もコンサートを見ているが、こんなことは初めてだった(もうひとつあった。彼の2日目の公演だ)。彼のバンドメンバーも身の危険を感じたと認めている。だがハリーは面白がった。「僕にとって、ツアーで一番すごかったことは、会場がコンサートと一体化したことだ」と彼は言う。「僕がすべてじゃなかったことだよ」と言って、お茶をすする。「僕はただの若造。会場の前に一人立って、みんなよろしく、と挨拶しただけさ」

その夜ロンドンではフリートウッド・マックのコンサートがあった。UKツアーの最後を飾る、ウェンブリー・スタジアムでの完売御礼凱旋コンサート。言うまでもなく、もっとも熱狂的な彼らのファンも会場にいた。この日ハリーが連れていた女性は、彼の母親。これが初めてのフリートウッド・マック体験だった。姉のジェマとバンドメンバーのローランド、ジョーンズ、その他2人の友人も同行していた。

彼は完全に世話焼きモードで、居心地のいいVIPボックス席を忙しく回りながら、みんなのシャンパングラスが常に満たされているかと気を配っていた。コンサートの幕が上がるや、ハリーが立ち上がる。一緒に歌い始め、ジョークを連発した。

コンサートの途中、ハリーの挙動が突然変わった。柄にもなく神妙な面持ちで黙り込み、一人座ってじっとステージを見つめた。この夜、彼が腰を下ろしたのはこれが初めてだ。数分前とは全く違う世界にいるようだった。だが、彼は数多くのフリートウッド・マックのコンサートを見てきたから、この後の曲順も熟知していたのだろう。そろそろ「ランドスライド」の出番。顎に手を置きながら、彼の視線はスティーヴィー・ニックスに向けられていた。いつも通り、彼女は自身最大のヒット曲の曲紹介で、27歳の小娘だった彼女がこの曲を書いたいきさつを披露した。

だがこの日、スティーヴィーは他にもメッセージを用意していた。スタジアムの観客に向かってこう言った。「この曲を私の小さなミューズ、ハリー・スタイルズに捧げたいと思います。彼は今日お母さんと一緒に来ているの。アンっていうのよ。お母さん、ハリーを立派に育てましたわね。彼は本当にジェントルマンですよ。優しくて、才能があって、ああ、本当に私はメロメロ。みんなもそうでしょ。この曲をあなたに捧げます」



スティーヴィーが「ランドスライド」を歌い始めると――「ずっと変化を恐れていた/だってあなた中心で生きてきたから」――アンがハリーのところへ歩み寄ってきた。彼女は彼の後ろにかがみこみ、腕をしっかりと回した。2人も一言も話さなかった。一緒に歌に耳を傾け、最後までぎゅっと身を寄せ合っていた。ウェンブリーの観客全員がスティーヴィーに合わせて歌う。だが、2人だけは自分たちの世界に浸っていた。



Translated by Akiko Kato

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