ハリー・スタイルズ密着取材「心の旅で見つけたもの」

ハリー・スタイルズ(Photograph by Ryan McGinley for Rolling Stone)



新境地開拓のきっかけは「失恋」

ハリーは時々、悩みを抱えるごく普通の25歳のように見える。もちろん、それが本当の彼の姿なのだが(ハリーと知り合ったのは昨年のこと。筆者の拙書を読んだハリーが連絡してきたのがきっかけだった。もっとも、筆者はもう何年も彼の音楽について書いているが)。つねに地球上で最も自信満々のようにみられている彼が、悩みや疑問をぶちまけるのを聞くのはおかしなものだ。「バンドにいたときは、音を外すんじゃないかといつも不安だった。ヘマをしちゃいけないと、ものすごくプレッシャーを感じていた。レコード契約を結んだとき、マネージャーにこう質問したのを覚えている。『もし僕が逮捕されたらどうなるんだ? 契約はなかったことになるの?』。今では、ファンのみんなが僕に自分らしく成長できる環境を整えてくれたと感じている。安心してミスを犯して、学べる場所を作ってくれた」

裏口へ回り、彼が所有するシルバーの1972年型ジャガー・EタイプでLAの街を走りながら土曜の午後を満喫する。ラジオが壊れているので一緒に「Old Town Road」を歌った。彼は感心しながら、「“ロデオとパイオツ”――史上最高の歌詞じゃないか」。以前のハリーは謎に包まれたポップスターで、処世術に長け、秘密主義だった。だが、徐々に心を開いて自分のことを語るようになり、このインタビュー記事のタイトル案を提案するほどまで打ち解けた。ちなみに彼のイチオシタイトルはこれ。「スープ、セックス、太陽礼拝」



どうやって新境地に達したのか? 後になってわかったことだが、その過程には失恋が絡んでいる。デヴィッド・ボウイの教えも少々。瞑想も少々。マジックマッシュルームには相当お世話になった。だが結局は、世界で最も熱望されるポップスターになるか、それとも一風変わったアーティストになるか決めかねた、好奇心旺盛な少年に行き着く。そして少年は両方の道を選んだ。


Photograph by Ryan McGinley for Rolling Stone

英国生まれのロックスターには、変わらない点が2つある。ひとつは南カリフォルニアを愛しているということ。そして車好きだということだ。ハリーが「Old Town Road」を大絶賛した数日後、我々は今度はテスラに乗って太平洋岸沿いを走った。ハリーがラジオに合わせて口ずさむ。「カリフォルニアアアア!」と、ズマビーチを駆け抜けながら、運転席で彼が叫ぶ。「くそったれ!」。海岸沿いには驚くほど大勢のカップルの姿があり、なにやら議論しているようだった。どのカップルが別れ話をしていて、どのカップルが単に会話しているのか2人で想像した。「ああ、なるほど、会話ね」と、ハリーは夢心地に言った。「おお、懐かしの雑談よ」

今日のハリーは70年代のゆったりしたヨット・ロックな気分のようで、ゲリー・ラファティやパブロ・クルーズ、ホール&オーツを歌った。ニーナ・シモンが以前「リッチ・ガール」をカバーしたことに触れると、彼はその曲を聴いたことがなかった。逆にハリーは、ドニー・ハザウェイがカバーしたジョン・レノンの「ジェラス・ガイ」でやり返した。

ハリーが最近体験したいかにも南カリフォルニアらしい体験を話し始めた。氷室に閉じ込められるという“コールドサウナ”。本当にまつげが凍ったという。途中で車を止め、スムージーと(「結局はアイスクリームだよね」)好物の激辛シバムギドリンクを買った。まるでバッテリー液のようなのど越しだ。「これで寿命が数年延びるよ」と、彼は太鼓判を押した。

Translated by Akiko Kato

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