ハリー・スタイルズ密着取材「心の旅で見つけたもの」

ハリー・スタイルズ(Photograph by Ryan McGinley for Rolling Stone)



「アイドル」だった過去について

ボーイズバンドのメンバーの常として、彼らはみなソロ活動を始めて成長し、アイドルだった過去を否定する。ジョージ・マイケルはレザージャケットを燃やし、スティングはポリスを辞めてジャズ・アルバムを作ったのは誰もが知るところだ。だが、ハリー・スタイルズの心理状態は違う。「そういうことがよくあるんだってことは知ってる。誰かが脱退すると、『あれは俺じゃない。俺は抑制されていたんだ』ってね。でも、あれは僕だった。抑制されていたなんてこれっぽっちも感じてないんだ。すごく楽しかった。もし楽しくなかったら最初からやってなかったよ。無理やりやらされてたわけじゃない」

ワン・ダイレクションのことを口にする時――名前では呼ばずに、「バンド」または「昔いたバンド」と言う――ハリーはつねに過去形で話す。聞きにくいことだが、聞かねばなるまい。彼にとって1Dはすでに過去の存在なのか? 「どうだろうね」と本人。「絶対復活しないとは言っていないし。そういう風には考えてないよ。もしやるとすれば、全員がやりたいと思ったときだろうね。『なあ、あのときはめちゃくちゃ楽しかったな。もう一度やろうぜ』っていうことの他に、理由なんて考えられないよ。だけどそのときが来るまでは、自分の音楽を作って、いろいろチャレンジしたい。今はこんな感じで曲作りを楽しんでるから、気持ちを切り替えて、再結成してもう一度やるか、って気分にはならないね。それに、仮に復活して同じことをやるとしても、どっちみち前と同じにはならないだろうしね」

バンドが休止したとき、メンバーとの友情に変わりはなかったか? 「ああ、そうだと思うよ」と本人。「間違いない。なにはともあれ、僕らは一緒に過ごした仲間だからね。これからもずっと友情は続く。大親友でないにしてもね。実際のところ、誰かとバンドを組んだからってずっと親友でいなきゃいけないわけじゃない。そんな風には上手くいかないよ。フリートウッド・マックが喧嘩したからって、彼らがダメなバンドってことにはならないだろ。たとえソリが合わなくても、互いに尊重しあうことはできると思う――僕らはその点すごく上手くやっていたし、これからもずっとそうだと思う。僕にとってはすごく大事だから、『もうこれっきりだ』とはならない。仮にもしそうなったとしたら、それなりの理由があってのことだと思うよ」


Photograph by Ryan McGinley for Rolling Stone

ハリーは性的に曖昧な雰囲気を漂わせるのを好む。それは彼のピンクのネイルからも明らかだ。有名人として数々の女性と交際してきたが、自らのセクシュアリティに関しては一貫して型にはめられるのを拒んでいる。最初のソロツアーで、彼はしばしばゲイプライドやバイセクシャル、トランスセクシャルの旗や、ブラック・ライヴズ・マターと書かれた旗を振った。フィラデルフィアでは、最前列のファンから拝借したレインボーフラッグを振った。旗には「アメリカをもう一度ゲイ(陽気)にしよう」と書かれていた。ライブで人気の「メディシン」は、『Europe ‘72/ ヨーロッパ ‘72』の頃のグレイトフル・デッドを彷彿とさせるギタージャムソングだが、パンセクシュアルな過激な歌詞がある。「男の子も女の子もご一緒に/僕はみんなとハメを外す/僕はそれでOKさ」

彼には1Dにいたときから、こうした派手なふるまいをする傾向があった。2014年11月、ハリーとリアムがイギリスのトーク番組に出演した時の有名な映像がある。司会者は、ボーイズバンドのファン向けの使い古されたお決まりの質問をした。恋人に求めるのはどんな点ですか? 「女性であること」とリアムは言い切った。「それが一番かな」。ハリーは肩をすくめて「それってそんなに重要じゃないよ」。リアムは驚き、司会者は狼狽した。その年の全米ツアーで、ハリーはNFLにドラフト指名された初のオープンゲイの選手、マイケル・サムのアメフトジャージを着て、彼への支持を表明した。そしてキング・プリンセスやMunaなど、それまで知られていなかったクイアのアーティストらを大々的に宣伝した。

ステージで旗を振ることは、彼にとってどんな意味があるのだろう? 「たとえそれが何であれ、自分がなりたい姿で、自分らしく感じてほしいんだ」と彼は言う。「もしかしたらコンサートで、独りじゃないんだと感じられる瞬間があるかもしれない。僕も白人男性として、自分がコンサートに来ている大勢の人々と同じ経験をしているわけじゃないってことは意識している。君たちの気持ちがわかるなんて言えないよ、だってわからないもの。だから『気持ちはわかる』と言うつもりはない。ただみんなに、自分も仲間として見てもらっているんだ、と感じてもらいたいんだ」

ソロコンサートを始めたばかりの頃、ストックホルムの公演で彼はこう発言した。「君が黒人だろうと、白人だろうと、ゲイでも、ストレートでも、トランスジェンダーでも――君が誰であっても、どういう人間になりたがっていようとも、僕は応援する。君たち一人ひとりを愛しているよ」

Translated by Akiko Kato

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