全米を震撼させたマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー放映、その影響は?

まさに青天の霹靂のような『Leaving Neverland』――だが、マイケル・ジャクソンの死後のビジネスには大きな影響はないもよう(Dan Reed/HBO)


なかでも大きな波紋を呼んだ2つの事件が、音楽以外の業界から持ち上がった。ルイ・ヴィトンは先週木曜日、ヴァージル・アブロー氏がジャクソンにインスパイアされて製作した2019年秋冬メンズコレクションの何点かを製造中止にすると発表した。大手ファッションブランドの主張によれば、同社が1月にコレクションを発表したのはサンダンス映画祭の開催前で、ドキュメンタリーの存在も性的虐待疑惑も知らなかったという。ニューヨーカー誌の最新のインタビュー記事によれば、アブロー氏はジャクソンがインスピレーションの源であると語り、『Leaving Neverland』について知っているかという質問に対しては、自分が焦点を当てたのは「世界中で受け入れられているマイケル像、彼のいい部分や人間性なんだ」と答えた。

ルイ・ヴィトンの決定によりショウにも登場したスパンコールの白い手袋などが発売中止となったことに関して、アブロー氏はのちにこう発言した。「ドキュメンタリーの後、ショウに対して感情的な意見が持ち上がっているのは知っています。私自身は、いかなる類の幼児虐待、暴力、人権侵害も断固として非難します」

一方、『シンプソンズ』のプロデューサー陣は『Leaving Neverland』の放送後、1991年にジャクソンが登場したエピソード「Stark Raving Dad」をシリーズから除外すると発表した。ニュースサイトThe Daily Beastとのインタビューに答えた元総合製作者のアル・ジーン氏は、ジャクソンが番組に出演したのは不適切な目的のためではないかと訝っている。「あのエピソードを見てごらんなさい、正直、あのエピソードは見るからにマイケル・ジャクソンに利用されています。我々が意図した内容とは違う目的に使われたんです」とジーン氏。「彼にとってはコメディだっただけでじはなく、道具として利用価値のあるものだった。……きっと、彼が子供たちを洗脳する手段のひとつだったんだと思います」

一般市民に目をむけると、いまだジャクソンを溺愛するファンたちは、ことあるごとに声高にジャクソンを擁護してきた。彼らはTwitter上で誹謗中傷する人々をやり玉にあげ、さらにはクラウドファンディングまで立ち上げて、ジャクソンの無罪を主張する一連の広告を作成した。ちなみにこの広告は、ほんのつかの間、イギリスのバスにお目見えした。

だが反対派も勢力を増しつつある。世界中の活動家が集まるソーシャルネットワークCare2の行動派らは、ラスベガスのマンダレイ・ベイ・ホテル&カジノに対し、マイケル・ジャクソンの銅像の撤去と、シルク・ド・ソレイユのレジデンス公演「マイケル・ジャクソンONE」の中止を求める署名運動を始めた。現時点で寄せられた署名は1万2000名以上。だが『Leaving Neverland』の放映後も、「ONE」は引き続き1日2公演、一度も休演することなく上演されている。ローリングストーン誌はシルク・ド・ソレイユに対しチケットセールスについてコメントを求めたが、返答は得られなかった。その代わり、ショウのwebサイトをぱっと見た限りでは、今後の公演ほぼ完売状態だった。

ジャクソンの最大のヒット曲を盛り込んだ家族向けのショウでもあるシルク・ド・ソレイユの公演が現在も上演中であるという事実は、今後予定されているジャクソンのミュージカル『Don’t Stop ‘Til You Get Enough』にとっては好材料かもしれない。2月、ジャクソン・エステートはシカゴでのトライアル公演を中止。その理由を、俳優陣のストライキによりスケジュールの折り合いがつかなくなったためとしている。エステートとともに共同プロデュースを手掛けるColumbia Live Stage社は現在、2020年夏にいきなりブロードウェイでのこけら落としを目指しているとのことだ。

今のところ、ジャクソンの名声はあまりにも大きいため、失墜することはなさそうだ。彼の忠実なファンは十分に頭数がそろっており、結束して彼の名誉を守り切ることだろう。少なくとも、『Leaving Neverland』の衝撃が消えるまでは。

サルター氏も、ドキュメンタリーの長期的影響をそれほど懸念していないようだった。「最悪の事態は、ライセンス契約を結んだ企業が連絡してきて、契約を解除すると言ってきたと場合です」とサルター氏。「そうなれば、我々は彼らの最大の競合相手に接触して、契約をと取り付けますよ」

Translated by Akiko Kato

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