世界を制したエド・シーランの「現実」と付き合う方法

4月に来日するエド・シーラン。ローリングストーン誌 2017年3月23日号のカバーストーリーにて( Photograph by Peggy Sirota)


「エドの価値観が大好きだ。わんぱくだけどね」ーエルトン・ジョン

エルトンはシーランの旅行は彼の「魂をリフレッシュさせた」と言う。マクデイドも「気づいたんだ、ここ数カ月の彼は、自分はもう大丈夫だと実感しているってね」と言う。「かなり素晴らしいことをもう一度成し遂げたと実感している。友だちや家族との繋がりも戻ったようだし、彼自身、落ち着きを取り戻したよ」

居間での即興コンサートが行われた夜が明けて、現在午前11時。客間の窓を叩く優しい雨音で外は灰色の空だと気づく。シーランがパーティを切り上げてからまだ5時間しか経っていない。しかし彼は階下のジムにいる。上半身裸でエリプティカル・マシンの上で日課の10分間ワークアウトの最中だ。「こうやって汗で全部流すのさ!」とシーランが言う。

彼のスタジオは廊下の向こう側にある。彼は、自宅に来た客にその廊下の壁にサインを書くように頼む。リック・ルービン、ハリー・スタイルズ、ベニー・ブランコ、シーランが大好きなアーティストの一人、ダミアン・ハーストのスケッチもある。ただ、一面だけ「それはクラプトン」以外何も書かれていない壁がある。シーランがニヤッと笑って言う。「エルトンが来週遊びに来るし、チェリーが料理するから、ここをレジェンドの壁にすることにした」

シーランとクラプトンの交流はメール交換が始まりだった。2016年の日本公演中、クラプトンはシーランをステージに招いた。クラプトンは時々シーランの自宅にやってきて夕食を一緒にする。シーランは批評家のお気に入りではないが、彼は「人の考えを気にしようと思えばできるよ。どんなときも誰かが俺を嫌っているけど、俺は『自分のヒーローたちは俺を好きでいてくれる。音楽を始めるきっかけになった人たちは俺のファンでいてくれている。それ以外の連中の言うことなんて気にする必要があるのか?』って思うわけさ」

昼食をとるために近所のパブに向かい、到着してすぐにシーランは故郷のエールビール、アドナムスを全員分オーダーする。「1月はものすごく濃厚なエールを飲むのが好きでね」と言いながら。そして、彼は故郷サフォークでの幼少時代について語り出す。運動音痴でからかわれたこと、赤毛でからかわれたこと、そして何よりも吃音が物笑いの種にされたこと。「降参するしかなくて、何も話せなくなった。子どもは本当に残酷だからね。俺が吃ると速攻で誰かが真似するのさ。それが繰り返されると『次は降参する』と心に決めることになる」。彼はエミネムのアルバム『ザ・マーシャル・マザーズLP』に合わせてラップしながら、言葉の詰まりを直したと公言している。

両親はともにギャラリーの学芸員で、サフォーク内での展覧会やレクチャーの企画と手配を行っていた。彼の父親はタフになれと教えた。シーランが語る。「父は口唇裂で生まれて、そのまま育った。だから父は『誰かにいじめられたら、そいつを思い切り叩け。そうすると二度と手を出さないから』と俺に教えたんだ」。シーランの父親は今でも罵倒を甘受しない。そんな父親が最近ワーナーで行われたパーティに出席し、会場でタバコに火を点けた時のエピソードをシーランが教えてくれた。「誰かが父に『すみません、ここは禁煙ですよ』と言った。父は『私はワーナーだが』と応えたのさ。そしたら誰も何も言わなくなったって」。彼の母親は父親と正反対の性格らしい。「母は文字通り天使のような人だよ」とシーラン。

Translated by Miki Nakayama

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