『ブラックスター』のキーボーディストが語る制作裏話

Photo by Deneka Peniston


ーボウイはあと1年で70歳になります。これからは、何百万回も演奏したような古い曲の演奏はやめて、新しい曲だけに集中してはどうかと思うのです。

ん?ライヴでは昔の曲をやらないといけないかな?

ーファンはその方が喜ぶでしょうね。そもそもボウイは90年のツアーで、ヒット曲からはもう卒業するといったんです。

どういう意味?ヒット曲の演奏はもうしない、ということ?

null
Photo: David Bowie (Rob Verhorst/Redferns/Getty)

ーそうです。90年の大規模なツアーで、今後ヒット曲の演奏はしないと宣言したのです。そして90年代の彼は、ライヴでは新曲と、知名度の低い旧曲だけを演奏していました。ところが90年代の終わりになると、またヒット曲の演奏をやり始めたのです。2000年代前半のツアーでは、すっかり何でも演奏するように変わっていきました。

本当?面白いね。

ーええ、2003~2004年のツアーはすばらしかったです。全部やってくれた。まるでキャリア全体をシャッフルプレイしているようでした。で、最終的には心臓発作があって、それ以来ライヴをしていないわけです。

ロリポップ事件はいつだったっけ?

ーあれは心臓発作の数日前です。観客が投げつけたロリポップの棒がボウイの目に刺さったんですね。その直前には、フロリダのライヴで、クルーメンバーの1人が転落死するという事故もありました。だから、もうツアーはやりたくないというボウイの気持ちも分かるのです。最後のツアーは悲惨でした。

それ以来、彼はツアーを怖がるようになったんだね。

ーそうですよね。でも、ニューアルバムの曲だけを演奏するワンナイト・ライヴをニューヨークでやるくらいならいいのではないのですか?

そんなことができるなら素晴らしいけどね。どうかな、ボウイもそれならやる気になるかもね。

ーボウイはもう10年も、インタヴューにすら応じていません。

うん。どうしてインタヴューを受けないことに決めたのだと思う?

ーこれは私なりの考えにすぎませんが、心臓の手術を受けた後、彼は家族と静かに療養したかったのだと思うのです。そうして姿を消している間に、ボウイは再び神秘性を帯びるようになっていきました。90年代や2000年代初頭にたくさんのインタヴューを受けても、特に彼のキャリアにプラスになることはなかったのに、彼は突然、70年代にそうであったように、神秘的な存在になったのです。おそらくボウイ自身もそのことに気がついて、それならこのままやっていこうと思ったのではないでしょうか。それに、ちょうど彼の新しいキャラにもはまっています。まるでロックスターの亡霊みたいですからね。

なるほどね。僕にもたしかにそんな風に見える。

Translation by Kuniaki Takahashi

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE