さらばスターマン: 史上最高のロックスター、デヴィッド・ボウイ

変幻自在のロックスター、デヴィッド・ボウイ (photo by Zuma)

ロックンロールの歴史に名を刻んだボウイ、その壮絶な生涯

この地球に産み落とされた異形のロックスター、デヴィッド・ボウイがこの世を去った日、世界中の人々が悲しみにくれた。アリーナを埋め尽くした孤独なキッズたちを前に、”君はひとりじゃない”と歌った彼は、この世界を優雅に放浪し続けた、セクシーでチャーミングな唯一無二のロックスターだった。

奇形を認め、狂人に語りかけた彼は、常に異質な存在でありながらも、どんなロックスターよりも人間的だった。ドレスを引き裂き、涙でボロボロになった子供たちの顔を見つめる彼の瞳は、10代のキッズたちが抱える混乱をただ肯定していた。グラマラスなスターマン、バラードの名手、ベルリンの貴公子、そういった自身のイメージを自由自在に変化させながらも、その声に宿る求心力が失われたことは決してなかった。どんな時も、彼の宇宙船は我々を進むべき方向へ導いてくれた。

そのカリスマ性は数多くの熱狂的な信者を生み出した。80年代をティーンエイジャーとして過ごした筆者は、ボストン公演のチケットを手に入れることができなかった土曜の夜に、自宅でラジオにかじりついていたのを覚えている。興奮冷めやらぬ様子のWBCNのDJたちのトークを聞いているだけで、ショーの様子が頭に浮かんで鳥肌が立った。その夜のボウイがどれほど素晴らしかったか、DJたちはいくら話しても話し足りない様子だった。1974年に『ライフ・オン・マーズ?』をカヴァーしたバーバラ・ストレイサンド、2012年に『スペース・オディティ』を独自の解釈で披露したディアンジェロ、マザーシップの船長としてボウイに惜しみないリスペクトを示したジョージ・クリントン、そして『ナイト・オブ・ザ・リビング・ベースヘッズ』で彼の曲をサンプリングしたパブリック・エナミーなどが証明しているように、ボウイの音楽には時代やジャンルの壁を超えて訴えかける魅力がある。正直に言って、彼が我々よりも早くこの世を去るなど、筆者は想像もしていなかった。彼は幾つものデヴィッド・ボウイを過去に葬り、その度に生まれ変わってきたからだ。

Translation by Masaaki Yoshida

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