『ブラックスター』のキーボーディストが語る制作裏話

Photo by Deneka Peniston


ー最初にボウイにあった時のことを聞かせてください。

1月に初めてスタジオに行った日だったよ。

ーこんなプロジェクトに呼ばれて、ビックリしましたか?

ビックリしなかったと言えばイヤミだろ。どうかな、すごいプロジェクトは前にもあったからね。嬉しいサプライズだった、ということにしておこうか。こういうことがいきなり始まって、機材やら日程やらの調整をするのはなんともワクワクしたね。

ーレコーディング初日のことを詳しく教えてください。デモは事前に聴いていたのですよね?

うん。1週間ほどのセッションが1月、2月、3月と3度に分けて行われた。そのたびに、デモは事前にもらっていた。まずはデモをしっかり聴いて、たしかダニーとティム(・ルフェーヴル)、マーク(・ジュリアナ)、僕の4人で集まってリハーサルをしたんだ。準備不足で録音の日を迎えたくはなかったからね、デモはたしか6曲ほどあったのかな、『★』と『ティズ・ア・ピティ・シー・ワズ・ア・ホア』があったのを覚えているよ。

スタジオには早めに入った。実際、前日にスタジオ入りして、セッティングやサウンドチェックを済ませておいたんだ。あれはやっておいて良かったよ。だから正式なレコーディング初日、ボウイと顔合わせをした時には、音楽の面では何も心配することはなかったんだ。ただ集中していればよかった。

ー初日にボウイからはどんな指示があったのですか?

ボウイはまず自己紹介をして、それから(トニー・)ヴィスコンティと、音楽プロデューサーのケヴィン・キルンを紹介してくれた。みんなの顔合わせを済ませたら、ボウイは「じゃ、この曲から始めようか」と言った。『ティズ・ア・ピティ・シー・ワズ・ア・ホア』だったと思う。それで、一緒にスタジオに入って、彼が最初の曲を口を開けて歌い出した時、急に実感が湧いてきたんだ。「なんということだ、僕は今、ロックスターと同じスタジオにいるぞ!」。会った瞬間はそうでもなくて、エレガントな紳士だなと思っただけだった。服装はカジュアルで、すごくとっつきやすくて、ごく普通の人だったよ。

ーあなたはどんなキーボードを使ったのですか?

僕は9台のキーボードをセットアップしていた。スタジオにあったグランドピアノを含めると10台ということになる。タックピアノも置いてあった。これは、ハンマーに鋲が打ってあって、弦に当たった時に金属的な音がするものだ。あれは芸術的だと思うほどチューニングのずれたスピネットピアノだったな。僕はデイヴ・スミス社のキーボード・アーティストだから、プロフェット08、プロフェット12、モフォ・エックスフォーを持ち込んだ。スタジオにはシーケンシャル・サーキット社のシックス・トラックがあったので、1曲ではそれを使った。モーグ・ヴォイジャーとミニモーグも持って行ったし、ホーナー・クラヴィネットでも数曲をやったね。ウーリッツァー・ピアノも2種類持っていった。そのうちの1つはチューブ・ウーリッツァーで、こいつはすごくファンキーで、パーカッシヴな曲にぴったりで、僕もそんなにきちんと弾かなくてもすむんだよ。こんなところだったと思うけど。

ートニーによると、ある種のサウンドを出すために、あなたはギターペダルを使っていたそうですが、どういうことですか?


うん、僕はある種、ウーリッツァーをメインキーボードにしているんだけど、これをギターに見立てて、気に入ったペダルをつなげているんだよ。ペダルに通してやることで、エフェクトがウーリッツァーのサウンドの一部になってくれる。実際、ペダルはどの楽器にもつなぎ替えることができるから、いろんなエフェクトを柔軟に使うことができるんだ。

ーどの程度デモに忠実に演奏し、どの程度をアドリブで演奏するのですか?

デモ音源には必要や要素が入っているわけだから、旋律やベースラインなど具体的な要素はしっかりと再現する。そして、ギターなのかキーボードなのかベースなのかはっきりしない部分については決めていかなければならない。こういうことはちょっと勉強が必要なんだ。ボウイは取りあえず僕らに自由に演奏させてくれるから、いろいろとトライしてみた。もちろん、もの事には限度がある。ボウイとか、大物アーティストとスタジオに入る時には、自分を出すところと、デモ音源に忠実なところと、自分のパートを完璧にこなせる本物のセッション・ミュージシャンたる部分との境界線をよく認識しないといけないね。もちろん、その線はスタジオ内の雰囲気が良くなるにつれて変わってくるんだけどさ、でも1月の第1週などは、とにかく僕らはデモ音源をこなすようにしていたよ。

Translation by Kuniaki Takahashi

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE