『ブラックスター』のキーボーディストが語る制作裏話

Photo by Deneka Peniston


3週間のセッションの2週目にはジェイムス・マーフィーがいたとも聞いています。彼の役割は何だったのですか? トニーは、もともと彼はプロデューサーのはずだったといっていました。

彼の役割は不明瞭だったね。ただやってきて、たむろしている感じだった。面白いことやクールなこともやってくれたよ。僕の音に自分が持ってきたマシンでフィルターをかけていた。EMS Synthiというんだ。いろんなモデルがあるんだけど、彼が使っていたのはEMS Synthi Aだ。ブリーフケースみたいにパカッと開けて使う。シンセのはしりだね。入力と出力の端子が付いているから、それを通せば何にでもフィルターをかけることができる。僕の演奏のいくつかのオーヴァー・ダビングはこいつを使ってやった。すごい効果がでるんだよ。ジェームスはこういうことが大好きなんだね。この機械は珍しいし、今買うとすごく高い。

(マーフィーが姿を見せる前に)ボウイはこんな風にいっていたかな。「火曜日に新たな”人体”がスタジオ入りする。あのLCD(サウンドシステム)のジェームス・マーフィーだ。彼はアーケイド・ファイアの『リフレクター』のプロデュースもしている。愉快な男で、いろんな提案で邪魔をしてくれるだろう。みんなで楽しもう」

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Photo: James Murphy (Gabriel Olsen/Getty)

ダニーによると、『ダラー・デイズ』は初日にボウイが即興で作った曲なのだそうです。その時のことを覚えていますか?

その時にはそういうタイトルの曲はなかったから、覚えていないなあ。デモ音源にも入っていなかったから、どの曲の話なのかも分からない。ボウイが何曲か、ギターで弾いてくれたことは覚えているよ。この曲は今朝書いたんだと言っていて、それをベースに録音をしたんだったと思う。

ーニュー・バージョンの『スー』について教えてください。

マリア・シュナイダー・オーケストラによるバージョンがあったから(『ナッシング・ハズ・チェンジド~オールタイム・グレイテスト・ヒッツ』収録)、そのアレンジをカルテットで再現しようとした。そのアレンジにあえて似ないように演奏した別バージョンもある。どちらが使われたのかはわからない。

ーラストの曲、『アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイ』は素晴らしいですね。何か覚えていることはありますか?

あの曲はとにかく画期的な曲だよ。壮大だ。トランスしてしまいそうだ。ウーリッツァーでピアノの転回を弾いたんだけど、ベースが下がっていってもずっと続くんだ。ずっとリピートしながら、だんだん大きくなっていく。壮大だよ。

ーアルバムには7曲収録されていますが、録音したのは何曲だったのですか?

12曲くらいだったと思う。

ーボウイとライヴ演奏をする可能性はあるでしょうか?

妄想ではもうやっているんだけどね(笑)。ライヴの話は出なかったなあ。ボウイは80年代にヒット曲が出だした頃のツアーの思い出話をしていたよ。『レッツ・ダンス』の時代のことだと思うんだけど、ツアー中に追加日程がドンドン決まるから、結局丸1年ツアーに出ていたといっていた。ツアーはあまり好きではなかったんだと思う。70年代だか80年代だかのボウイのインタヴューで、しばらくは飛行機に乗らないぞと語っていたのを覚えているよ。あのツアーでも、きっと腰は重かったんだろうなあと思ったよ。

Translation by Kuniaki Takahashi

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