トーンズ・アンド・アイが語る、PiNKからの影響、「傷つきやすさ」を歌う理由

「その時に自分が何を感じたのかを思い出すのは大切なことだと思う」

ーストリート・ライブを始めた時、すでに仕事に就いてましたよね。そこで音楽の道を選んだのは大きな決断だったと思いますが。

以前はお店で働いていたんだけど、お店の外の通りにストリート・ミュージシャンがいて。それを通りにいる人たちが観ていたの。当時の私はすでに音楽活動を始めていて、パブやホテルでプレイしていたんだけど、ストリート・ミュージシャンを観て、私もやりたいと思ったし、毎日できると思った。それが私の新しい仕事になったし、それで私はハッピーになれたから。

ー今では成功していますが、そこに至るまでの道のりはどうでしたか? 夢を思い描く中で葛藤もあったと思います。

もちろん葛藤もあったけれど、実は当時、自分の曲をリリースしようなんて考えたこともなかったの。私はただストリート・ミュージシャンをやりたかっただけで。だから曲をリリースした時、自分が成功するとも思っていなかった。「Dance Monkey」にしても、リリースするまで、ストリートで1年間プレイしていた曲だった。そこから大きなラジオ局から連絡をもらうことになって、その時にリリースしてもいいなと思っただけ。でもそれまでは曲をリリースするとか、そういうことは考えたことがなかったし、知識すらなかった。音楽チャートの存在も知らなかったし、そこで優劣の判断が生まれることも知らなかった。自分が曲をリリースしたら、私の小さな世界にいる人たちが聴いてくれると思っていただけで。そういう人たちに向けて曲をリリースすれば、私がいない時でも私の曲を聴いてもらえると思っていた。

ーニュー・アルバムも完成したんですよね。

アルバムは完成しているし、ちょうど今日アートワークも完成して、バイナルを作り始めたところ。時間は今までで一番かかったけれど、やっとリリースできるからとてもうれしい。

ー制作に何年もかけたんですよね。

何年もやってみたかったやり方で曲作りをやってみたし、急がないで作ったのも間違いなかったと思っている。大好きなアルバムになったし、大好きじゃなければリリースなんてしないから。きっとみんなにも気に入ってもらえると思う。

ーリリック、音楽性、曲作りのアプローチは変わりましたか?

音楽的にはちょっと変わったと思う。何曲かはとても明るくて楽しい曲だけれど、ユニークなところもある。ストレートなポップ・ソングもあったけれど、クリエイティブな誠実さに欠けるという理由で、最終的にはボツにしている。どの曲にもストーリーが込められていて、自分について書かなかった曲は1曲もない。前のアルバムとは違うものになったと思うし、非常にオープンなものになっている。どの曲のリリックでも傷つきやすさを扱っているんだけど、1曲だけ例外があって。「Call My Name」という曲で、その曲はソングライターのジャネット・アンドリュースと一緒に作っている。アルバム全曲を聴いた後、自分でもこういう曲が出来てしまったのかと思ったけれど、これは私の中から出てきたものだから。このアルバムがどういうものかは、聴き手がゼロの状態で聴いてもらって判断してもらいたい。ただ一つだけ言えるのは、前のアルバムの時の私はバラードを歌うのが怖かったということ。それを今回できたのはうれしかった。

ー今年3月にリリースした「I Get High」はアルバムからのリード曲になりますか?

「I Get High」は友達とのノスタルジックな気持ちを描いた曲で、個人的にも大好きな曲なんだけど、リード曲ではなくて。アルバムのリード曲はアルバムをリリースする時に出す予定。



ー「I Get High」は若い時に誰もが感じるような感情が描かれていて、アンセムという感じがしました。

そうだと思う。それに、「I Get High」はライブでやるとスペシャルな曲になるから。リリース前だったけれど、PiNKのツアーでこの曲を披露したら、聴いたことがない曲なのに、みんなのムードが高まったし、エネルギーも高まって、みんなが同じ感情を共有することができたの。

ー高揚感のあるアンセムですが、あなたが「but we saw ghosts」(でも私たちは幽霊を見た)、「but we were lost」(でも私たちは迷ってしまった)と歌うところは、はかなさの心底を突く感じがして、グッと来ましたね。

この曲を書いた時の私は、人生で一番感情が壊れやすくなっていた時期にいたと思う。でもこれって、私と同年代がこの歳になって感じることだと思っていて。それにそこに気づくことは重要だと思うから。でも多くの人は、大人になったらこの感情を抑えないとおかしくなってしまうなんて言う。それでその感情を隠して、すべては問題ないというふりをして、ノーマルに見せようとする。それで、年相応に行動しなきゃいけないと思っている。だけど友情が壊れた時、世界の終わりだと思っていた時期があったわけで。その時に自分が何を感じたのかを思い出すのは大切なことだと思うから。

ーこれはRolling Stone Japanの取材ですが、Rolling Stone Australiaのアワードでグローバル・アーティストを受賞したんですよね。

受賞するなんて思ってもなかったから、うれしかった。PiNKとのツアーの最終日の翌日にアワードに行ったんだけど、いきなり受賞することになったから、最高の瞬間になった。

ーRolling Stone Australiaの表紙の写真も相当カッコいいですね。

最初はとてもシャイだったけれど(笑)。キャップとサングラスを着けたら、オープンになれたし、自由になれた。

ー今後の予定を教えてください。

もうすぐ行く日本のことは、マックルモアにもいろいろ聞いてみたの(笑)。今後はアジア、ヨーロッパにツアーと回って、アルバムを出してからオーストラリア・ツアー、アメリカ・ツアー、そこからまたヨーロッパ・ツアーと続く予定。初めての日本は楽しみにしているし、みんなにライブに来てほしい。I love you!!



TONES AND I 来日公演

5月28日(火)東京・渋谷Spotify O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット ¥7,800(税込/All Standing/1Drink別)

https://www.creativeman.co.jp/event/tones-and-i/

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