P!NKが「愛と信頼」のメッセージを届ける理由、音楽の力を信じるスーパースターの新境地

P!NK

 
P!NK(ピンク)が通算9作目の最新アルバム『TRUSTFALL | トラストフォール』をリリース。全米屈指のポップアイコンによる新境地を、音楽ライターの村上ひさしに解説してもらった。

「Get The Party Started」(2001年)、「So What」(2008年)、「Raise Your Glass」(2010年)、「Just Give Me A Reason」(2013年)などなど、数々のシングルヒットを続出していた一時期に比べると、最近のP!NKは大人しくなった……そう感じている人は少なくないだろう。特に日本においては、彼女がスタジアム級の大会場で展開するアクロバティックでエンターテイニングなステージが未だ実現しておらず、そもそも彼女の豪快でパワフルなキャラというのが、いまひとつ上手く伝わっていない気がする。一方の本国アメリカはといえば、『The Truth About Love』(2012年)、『Beautiful Trauma』(2017年)、『Hurts 2B Human』(2019年)の直近アルバムが3作連続でNo.1を記録するなど絶好調。いまや紛れもなく国民的シンガーという位置付けだ。通算9作目となるニューアルバム『TRUSTFALL』に対しても、当然ながら大きな期待が寄せられている。

アルバムのタイトル“TRUSTFALL”とは、後ろ向きに倒れて、背後の人に受け止めてもらうという、子どもたちがよくやる遊びのような行為。後ろの人がちゃんと受け止めてくれることが大前提にあるわけで、信用できるかどうかが鍵となる。彼女の場合は、それが夫であったり、子どもたちであったり、もっと広義なら、ファンやスタッフ、友人なども含まれているだろう。ジャケットに写る彼女は、崖の上から背後を見下ろし、まるで皆に向かって“信じてるよ”と言わんばかり。アルバムにはこれまで以上に親愛の情や家族愛が満ち溢れ、真摯でエモーショナルな感情が渦巻いている。

昨年11月にリリースされたリードシングル「Never Gonna Not Dance Again」では、“もう踊らないとか絶対ないし”と高らかに歌って、自身がアンストッパブルであることを宣言した。パワフルでフィールグッドなこのダンスアンセムのプロデュースにあたったのは、マルーン5からテイラー・スウィフトまでを手掛けるマックス・マーティンとシェルバックのコンビ。彼女とはすっかりお馴染みの2人は、ソングライティングにも参加している。ちょっぴり懐かしいレトロ風サウンドに合わせて、ミュージックビデオではローラースケートを履いてダンスを披露。ここ最近のローラーディスコの再々ブームの動向も、ちゃっかり押さえられている。



2ndシングルとして今年1月に公表されたタイトル曲「TRUSTFALL」もアッパー系。ロビンの「Dancing On My Own」を彷彿とさせる繊細かつドラマチックなダンスアンセムには、エド・シーランやリタ・オラなどを手掛ける英国人DJ /プロデューサー、フレッド・アゲインが協力。最近メキメキ頭角を表してきた彼は、2020年のブリット・アワードで最優秀プロデューサー賞を受賞しており、2023年も3部門でノミネートを受けている。“信頼して身を任せるの、ベイビー”と繰り返し歌われる同曲のミュージックビデオでは“倒れ込むこと”、つまり“思い切って飛び込むことに意義がある”と冒頭で呟かれて、如何にもP!NKらしいバイタリティ溢れる人生観ではないかと唸らされる。




メロディックなポップチューン「Turbulence」には、マシュー・コーマが参加。EDMプロデューサーとして活躍する傍ら、カーリー・レイ・ジェプセンやペンタトニックスなども手掛ける彼が、共作とプロデュースを担当し、P!NKの伸びやかな歌声を、いっそう鮮やかに聴かせている。その他、彼女のキャリア初期から多数のヒット曲に携わってきたビリー・マン(セリーヌ・ディオン、ジェシカ・シンプソン他)、グレッグ・カースティン(アデル、シーア他)といったお馴染みのヒットメーカーたちもアルバムには参加。レイベルやテディ・ガイガーといった以前から繋がりのあるシンガー・ソングライターも共作などで協力する。

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