P!NKが「愛と信頼」のメッセージを届ける理由、音楽の力を信じるスーパースターの新境地

 
フォーク系への傾倒、情感豊かなナンバーが意味するもの

P!NKといえば大声でシャウトして、常にパワー全開というイメージが強いかもしれないが、本作にはアコースティック楽器をバックに素朴な歌を聴かせたり、ムーディなナンバーも多数並んでいる。トラックリストを見てまず気づかされるのが、ユニークなゲスト陣の顔ぶれだ。「Ho Hey」などのヒットで知られるアメリカのオルタナティブ・フォーク・バンドのザ・ルミニアーズ、スウェーデンのフォーク姉妹デュオのファースト・エイド・キット、前作でもコラボしたアメリカ人カントリーシンガーのクリス・ステイプルトン。それぞれフォーキーでシンプルな楽器演奏をバックに、彼女と味わい深いデュエットを聴かせてくれる。ザ・ルミニアーズとの「Long Way To Go」では、ハモンドオルガンの美しい音色に乗せて、大自然に向かって歌っているかのようだし、ファースト・エイド・キットとの「Kids In Love」では一転して、屋内で膝を突き合わせてアコースティック・ギターを爪弾いているかのよう。かと思えば、アルバム本編のラストを締めくくる「Just Say I’m Sorry」では、まるで映画のワンシーンのように神々しいデュエットを、魂を込めてクリス・ステイプルトンと披露する。以前にもインディゴ・ガールズらともコラボしていた彼女だけに、フォーク系への傾倒はそれほど意外ではないけれど、アルバムのオープニング曲「When I Get There」から、しっとり歌い上げられ、後半には素朴なバラードが続くのには驚かされる。そんな構成も、きっとアルバムの全体像として彼女が思い描いていたものだろう。



本作『TRUSTFALL』には、緩急を付けて情感豊かに歌い上げられるナンバーも多い。もともと懐の深さや器の大きさを感じさせるキャラクターだったP!NKだが、二児の母としてのプライベートの変化や、数年前に父親と親友を亡くしたことも、作風に大きな影響を及ぼしているという。家族との関係や人との繋がりを改めて考えるきっかけにもなったというし、そんな自身の変化も素直に受け入れているそうだ。だからこのアルバムには、こんなに温かい感情が流れており、聴いていると優しい気持ちにさせらせたり、希望が湧いてくるのかと納得させられる。

6月からは欧米で『Summer Carnival』と題された大規模なワールドツアーもスタート。53回の公演が全てスタジアムという、驚くべき規模で実施される。シルク・ドゥ・ソレイユのようなエアリアル(宙乗り)演出で知られる彼女だが、ますます進化したサーカス的なショーを披露してくれるという。それこそ体を張った“TRUSTFALL”の連続。本作のテーマを全身全霊で体現してくれるに違いない。






P!NK(ピンク)
『TRUSTFALL | トラストフォール』
再生・購入:https://PinkJP.lnk.to/TRUSTFALLRS

Tag:
 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE