「33回刺した」16歳の女性死刑囚なぜ死刑を免れることができたのか? 米

ここからはポーラの動きをざっくり駆け足で追っていこう。彼女は老女の両腕と両足をさっと切りつける。「金はどこだ、ビッチ?」と叫んでいる。何度も何度も叫んでは老女の服を切り裂き、だんだんやけを起こし、刃物で肌を切りつける。ポーラが老女に馬乗りになる。またがって老女の顔を見下ろすと、銀ボタンのようなペルケさんのイヤリングや、眼鏡グレームの下の血だまりや、老人の肌にありがちなシミが見て取れた。老女の口から単語の羅列が漏れ聞こえる。ポーラに聞き取れたのは「こんなことをすると後悔しますよ」という一節だけだった。

ポーラの中でカギがかちっと回り、止まると、彼女は一気に動きだした。老女の胸を刺し、ナイフを引き抜いて、また刺した。30回以上刺してようやく動きを止め、ペルケさんの腹にナイフを突き立てた。

ようやくポーラは力尽きた。デニースを見ると――彼女は壁にもたれかかったまま、その場にずっと立ち尽くしていた。「こっちに来なよ」とポーラが言う。「ナイフを握って」。

デニースは体中が震えていた。自分には無理――まだ子どもだもの。カレンがやってよ。ポーラは立ち上がって、カレンに場所を譲った。

だがカレンは身動きしなかった。「おばさんを見られない」 カレンはダイニングルームを出ていくと、バスタオルを持って戻ってきた。白いテリー織のタオルをペルケさんの顔の上に落とすと、カレンは死にかけている老女の両脚にまたがった。

ポーラとデニースは家の中を物色した。エイプリルがやって来て加勢した。少女たちは寝室のクローゼットからバッグやハンガーや毛布を引っ張り出し、ドレッサーの引き出しやソファのクッションを出して、ようやく10ドル見つけた。3人が物色している間、カレンはペルケさんの上にまたがって、ナイフを握ったままだった。最初の15分間が経過したところで、カレンはナイフがどこまで深く入るのか試してみることにした。ナイフを押し込む。押し下げると、ナイフは胸を突き抜けて反対側――背中からカーペット、木製の床材まで貫通した。その後彼女は柄を左右にゆらし、刃先が固定されているのを感じた。

ルースさんは標本のように、自宅のダイニングルームの床に釘付けにされていた。眼には何も映っていなかった。老女は間もなく息を引き取るだろう。少女たちはまだ家の中をぐるぐる歩き回り、孫の写真をひっくり返したり、オスカーさんのものに触れたり放り投げたりしていた。ルースさんの家を訪れたその他大勢の子どもたちと変わらなかった。だからこそ、彼女は少女たちを中に入れたのだ。

数日中に少女4人は全員逮捕され、レイク郡のジャック・クロフォード検事はポーラ・クーパーに死刑を求刑することになる。1年後、留置所で16歳の誕生日を迎えたポーラは、大勢が傍聴席に詰めかける法廷で死刑を言い渡される。クロフォード検事は「ある種の犯罪では、15歳の若さでも究極の代償を支払わなくてはならないと法に定められている」と報道陣に語る。だが数カ月もしないうちに、ビル・ペルケさんは祖母を殺した少女を許そうと決心する。彼は死刑を待つ少女に連絡を取る。「ポーラさん、あなたに手紙を書かなくてはいけない気がしています……僕はすべての出来事には理由があると信じています……」

Penguin Pressより3月28日に出版、アレックス・マー氏の『Seventy Times Seven』より抜粋
Penguin Random House株式会社、Penguin Publishing Group出版
Copyright © 2023 by Alex Mar

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from Rolling Stone US


Akiko Kato

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