「33回刺した」16歳の女性死刑囚なぜ死刑を免れることができたのか? 米

LAKE COUNTY POLICE DEPARTMENT

16歳でアメリカ史上最年少の死刑囚になったポーラ・クーパーの物語を描いたアレックス・マー氏の新著『Seventy Times Seven:A True Story of Murder and Mercy(原題)』が2023年3月28日に出版された。

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1985年春、インディアナ州ゲーリーで、彼女は友人3人と午後の授業をサボり、おしゃべりに興じながら、聖書を教える老女ルース・ペルケさん宅に強盗目的で向かった。少女たちが家を後にした時、ペルケさんはポーラに33回刺されて死んでいた。暴力的な犯罪はインディアナ州を震撼させ、死刑判決が言い渡された時には抗議はまったく上がらず――高校1年生のポーラは死刑囚になった。

だが被害者の孫にあたるビルさんが家族や周囲の反対を押し切ってポーラを赦すと、流れが変わり始めた。ビルさんのほうからポーラに連絡を取った――人種差別の歴史が残る土地で、40歳白人の鉄鋼作業員と10代の黒人家出少女の友情が始まり、恩赦を求める運動が起きた。中西部の鉄鋼の町で起きた悲劇はアメリカ国内外、果てはバチカンにまで広がり、ヨーロッパ各紙は一面でこのニュースを伝え、数百万人がポーラを支援する嘆願書に署名した。同時にアメリカ国内では強力な一派が形成されつつあった。かれらの目標はただひとつ、18歳未満の少年少女への死刑禁止だ。

ビルさんとポーラが友情を育み、他にも凶悪犯罪を許す人々がいることが判明する中、2人の物語は「共感によって人はどこまで思い切った行動をとれるのか」と問いかける。死刑執行を待つ間、ポーラの運命は避けて通れない問いを投げかける。正義を叫ぶ時、私たちは具体的に何を求めているのか? 赦しは失望と諦観の末の選択なのか、それとも勇気ある行為なのか?

以下は本書の第1章からの抜粋だ。波乱に満ちたポーラの幼少時代、姉ロンダとの親密な関係(ロンダは妹を「一生の友達」と呼んだ)、そして大勢の人生を変えた1985年春の午後の惨劇が綴られている。

Akiko Kato

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