ペイヴメントが語るバンドの軌跡とそれぞれの人生、ギャリー・ヤングの今、新作の可能性

 
Z世代に愛される未来、新作の可能性

―先ほどボブさんが言ってたように、90年代の象徴として駆け抜け、90年代の終わりに解散したというのは、実にペイヴメントらしい物語という感じがします。

マルクマス:僕らはあの頃、ニルヴァーナやパール・ジャムが人気だった時代に、新しい世代が求めているのはグランジだけではないことを証明したと思う。それに僕らが生み出した楽曲やスタイル、プロダクションは数十年後の今にも結びついているような気がするんだ。例えば、70年代のコメディレコードを今聴いても全然面白くないよね。その頃のサイケデリック音楽にしても、フラワーやレインボーといったモチーフからして古臭く感じる。

ボブ:ユニコーン・リバーとかね。

マルクマス:ロバート・ダウニーの父親みたいな天才が作った映画でさえ、70年代特有のカウンターカルチャーが全開で、僕らの子供たちはそのユーモアを理解できないだろう。でも、彼らはペイヴメントの音楽を聴くことはできる。親子関係を抜きにしてもね。それは、僕らの曲が何かしらの形で今とつながり続けているからだと思うし、すごくクールだよね。



―お子さんからペイヴメントについて、何か言われたりすることもありますか?

マルクマス:娘は好きみたいだよ。

ボブ:昨夜もライブを観に来てたよね。

スコット:僕にも子供がいるけど、ペイヴメントのファンだって。

マルクマス:どうも誇りに思ってくれてるみたいだ。ただ、学校で親たちが「君のお父さんはペイヴメントなんだね」と言ってくることもあるけど、あれは大袈裟だよ。ショーン・レノンに「ジョン・レノンが父親なんだね」って言うならわかるけど……。

スコット:娘は今、バンドでピアノを弾いているんだけど、仲間に僕のことを言うと「えー、本当⁉️」って驚かれるらしい(笑)。

マルクマス:それはインターネットで過去の動画とかを見てるからだろ? 名前で検索したら写真が全部出てくるから。ただ残念なことに、僕らは金銭的に成功を収めたわけじゃない。不憫なバンドだな。

―(笑)でも実際、若いアーティストもみんなペイヴメントが大好きですよね。ビーバドゥービーは「I Wish I Was Stephen Malkmus」という曲まで発表していますし。

マルクマス:あれはいい曲だよね。

―スーパーオーガニズムのオロノも、ペイヴメントの音楽を聴いて育ったとか。

ボブ:彼女はカッコイイ。

―90年代にX世代の代弁者として支持されてきたペイヴメントが、今ではZ世代のアウトサイダーにとって心の支えとなっている。そのことについて思うことは?

マルクマス:90年代には音楽やファッションというジャンルを超越した、大きなカルチャーのトレンドがあったわけだよね。いいものは時間が経っても廃れないということじゃないかな。それに、当時は評価されていなかったものが、後になって評価されることもある。例えば、スリー・ドッグ・ナイトよりヴェルヴェット・アンダーグラウンドの方が断然素晴らしいとかね。かつては影響力があって、レコードもたくさん売れて、業界を動かしていたけど、今聴くと僕らの方がいい音楽を作ってた、みたいな。つまり、ZとかYみたいな世代は関係なくて、音楽そのものが重要だと思うんだ……質問の答えになってないかもしれないけど。


Photo by Hirohisa Nakano

―最後に聞かせてください。いつかペイヴメントとして、新曲やニューアルバムを発表する可能性はあると思いますか?

マルクマス:おそらくないね。

―即答(笑)。

マルクマス:当時作った音楽は魔法みたいなものだ。今の僕らにペイヴメントの音楽を作ることはできない。もちろん、自分たちの名声をより高めたい気持ちはあるけど……。

ボブ:バンド名を「ユニコーン・リバー」に変える? これまでほとんど曲を作ってこなかった僕が、今後はペイヴメントの曲を作るというのはどうかな?(笑)

マルクマス:合理的に考えてみれば、今まで作りあげてきたものを汚すことになりかねないし、本当にそうなる可能性が高いだろう。うまくいかなかった曲も含めて僕らの曲が好きだし、大事にしたいんだ。今さらアルバムなんか作ったら、年寄りがイーグルスみたいなことをやってると言われかねない。まあ、わからないけどね。

ボブ:今年の初め頃に録ったカバーソングの出来が素晴らしいんだ。うまくまとまっていて、僕たちらしい仕上がりになっている。もしかしたら、これが僕らにとっての「新しい道」になるかもしれないね。

【写真ギャラリー】1993年と2023年のペイヴメント(全10点)



ペイヴメント
来日記念カラー盤2タイトル
2023年3月10日リリース

『Live Europaturnén MCMXCVII (Limited Orange Vinyl Edition)』
※1997年8月15日ドイツ公演の模様を収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13277


『Live Europaturnén MCMXCVII (Limited Purple Vinyl Edition)』
※1997年4月11日ロンドン公演の模様を収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13276

Translated by Emi AokiEmi, Natsumi Ueda

 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE